崎守トウジ
| タイトル | 崎守トウジ |
|---|---|
| 画像 | Sakimori_Tohji_boxart.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北門の封印版パッケージ |
| ジャンル | コンピュータRPG |
| 対応機種 | プレイボックス64 |
| 開発元 | ノクス・クラフト |
| 発売元 | 星見インタラクティブ |
| プロデューサー | 神崎 礼治 |
| ディレクター | 御厨 章吾 |
| 音楽 | 霧島 ハル |
| シリーズ | 氷壁都市クロノア |
| 発売日 | 1998年11月27日 |
| 対象年齢 | 15歳以上推奨 |
| 売上本数 | 全世界累計182万本 |
| その他 | 拡張ディスク版は翌年に発売 |
『』(さきもりトウじ、英: Sakimori Tohji)は、に架空のの開発会社から発売された用。『』の第3作目であり、通称は「トウジ三部作」とも呼ばれる[1]。
概要・概説[編集]
『』は、の外縁部に築かれた封塞環を舞台とするである。プレイヤーは測量士見習いのを操作し、年に一度だけ開く「凍港門」の再封印をめぐる事件を追う[2]。
本作は、前作までの直線的な構成を改め、街区ごとに異なる気圧層と時間遅延が設定された半オープン式のマップが採用されたことで知られている。また、戦闘中に風向きが変化すると呪文の射程がわずかに伸縮する仕組みが導入され、当時の攻略誌では「雪国の天体観測のような戦闘」と評された。
タイトルの『崎守』は、旧が用いていた海岸標識の符牒に由来するとされるが、実際には開発チームの会議室にあった避雷針の銘板から着想されたという説もある。なお、発売後にの同人サークルが同名の非公式MAP集を頒布したことから、名称をめぐる小さな混乱が生じた[3]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、昼夜ではなく「霧相」が1日を9段階に分けて進行する。霧相が第6相を超えると街の一部が移動可能になり、逆に第2相ではNPCが方角を忘れるため、会話選択肢が増えるという奇妙な仕様がある。
本作は一般的なに見られる経験値制を採用しているが、経験値は敵を倒すことではなく、境界標識を正しい向きに立て直すことで得られる。このため、序盤で最も効率のよい稼ぎは「倉庫区画の杭打ち」であるとされ、当時のファンジンでは延々と杭を打つプレイ動画が話題になった[4]。
戦闘[編集]
戦闘は最大4人の隊列制で、前衛・中衛・後衛に加え、風見台に配置される「観測枠」が存在する。観測枠は直接攻撃を行えないが、敵の属性を1手先まで予測できるため、上級者ほどこの枠を重視した。
一方で、戦闘中に使用できる「逆流詠唱」は、成功すると呪文の威力が1.8倍になるが、失敗すると味方全員の足音が3ターンだけ遅延する。これが対戦モード実装の際に大きな問題となり、公式大会では足音遅延の有無を判定するためだけに審判が笛を吹く運用が行われた[要出典]。
アイテム[編集]
アイテムは、武具よりも測量機器の比重が高い。とくに「真鍮方位盤」は、装備すると逃走成功率が12%上がるが、同時にメニュー画面の地図が3度傾くため、酔いやすいとして敬遠する者も多かった。
また、回復アイテムである「雪糖錠」は、使用するとHPが回復するだけでなく、主人公の台詞が一時的に古語になる。開発当初は単なる回復薬であったが、スタッフの誰かが誤って砂糖ではなく塩を入れた試作版を気に入り、そのまま採用されたといわれる。
対戦モード[編集]
対戦モードは、2人で同一マップを走査し、相手より先に封印杭を6本立てた側が勝利するルールである。攻撃よりも位置取りが重視されるため、発売当時はアクションゲームというより陣取り将棋に近いと評された。
なお、通信対戦では「北風警報」が鳴ると画面端が凍結し、相手の操作入力が半拍遅れることがあった。これは仕様であると説明されたが、実際には通信ケーブルの被覆が寒冷地向けに薄すぎたためであったという[5]。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、劇場版サイズのイベントを省略した「短編巡航」が選択できる。ここでは1周45分でクリアできるよう調整されており、通勤中に2駅ぶんだけ進める遊び方が雑誌で推奨された。
また、特定の曜日にのみ発生する「無風の書庫」では、敵が出現しない代わりに閲覧可能な文書が増える。これを全ページ回収すると、ゲーム本編よりも長い30分超の紙芝居が解放されるため、実質的に資料集として遊ぶ者も少なくなかった。
ストーリー[編集]
物語は、の外縁にある封塞区で、古い標識が一斉に逆向きへ回転する事件から始まる。測量士見習いのは、師匠の失踪をきっかけに、都市を支える「北門封印」の再点検へ向かう。
中盤では、封印の核が実は巨大な潮汐計算機であり、都市の安全が毎晩2分ずつ人工的にずらされた時間の上に成り立っていたことが明らかになる。トウジはとの対立に巻き込まれ、最終的に封印を閉じるか、都市全体の時計を戻すかの二択を迫られる。
エンディングは12種類存在するが、最も有名なのは「凍港門を開けたまま朝を迎える」結末である。この場合、住民の8割が遅刻する一方、港の魚が新鮮なまま市場に並ぶという異様な結果が描かれ、発売後しばらくは「最も生活感のあるバッドエンド」として語られた。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
は、17歳の測量士見習いである。無口だが地図の誤差には異様に敏感で、微小なズレを見つけると会話中でも定規を取り出す癖がある。開発資料によれば、歩幅を0.7cm単位で設定したため、移動モーションに独特の硬さが生じたという。
なお、彼の姓は当初「崎森」であったが、タイトル画面で「守」の字がやや大きく表示されることから、発売直前に変更されたとされている。
仲間[編集]
は、風向計を武器にする通信士であり、会話イベントの7割でトウジを小馬鹿にする。は、封印杭の設計者の孫娘で、装備欄を3ページ先まで先読みできる特殊能力を持つ。
また、敵対勢力から寝返るは、戦闘では頼りないが、宿屋の料金交渉だけは異様に強い。攻略本では彼の加入条件が「雪解け前にカウンターで牛乳を買うこと」としか書かれておらず、発売直後は条件解明に一週間を要した。
敵[編集]
敵役として最も重要なのは、封印の維持を名目に都市を閉じ込めようとする議長である。彼は終盤まで直接戦闘を行わず、常に「気圧の正統性」を語る演説でプレイヤーを苛立たせる。
ほかに、マップ端から現れる機械獣や、会話不能のまま襲い来るなど、妙に記号的な敵が多い。とくに無名の灯守は、倒すと毎回同じ置き手紙を残すため、ファンの間ではむしろ環境音の一部として扱われた。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、都市は「霧相」と呼ばれる気象層によって区切られている。霧相は単なる天候ではなく、記憶の保存媒体でもあるとされ、古い通りほど会話の選択肢が増える設定になっている。
また、封印施設は「北門」ではなく「北門の影」に存在すると説明され、実際の座標とは30メートルずれている。これは開発時にの倉庫地帯で行われたロケハンで、スタッフが正門と裏門を取り違えたことに由来するという。
作中語の「崎守」は、単に地名の一部ではなく、境界を守る役職名でもある。シリーズ第1作では未登場だった概念であり、ここで初めて「守ることは、見張ることではなく測ることである」という謎めいた命題が提示された。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
制作は春、前作の売上好調を受けた社内で始動した。もともとはアクションシューティングとして企画されていたが、敵弾の軌跡を計算するよりも境界線を引くほうが面白いとして、途中からへ転向した。
プロデューサーのは、発売前インタビューで「3人以上が同じ地図を見た時に起こる沈黙をゲームにしたかった」と語ったとされる。ただし、この発言は地方紙の聞き書きでしか確認できず、後年の研究者からは脚色の可能性も指摘されている。
スタッフ[編集]
ディレクターは、メインデザイナーは、プログラマーはが担当した。とくに板倉は、メニュー画面のカーソル移動に「風が吹いているような遅延」を加えるため、独自の慣性補間を組み込んだことで知られる。
音楽はが担当し、実際の録音には港湾用の霜取りヒーターと、1台だけ残っていた旧式のが用いられたという。スタッフロールの末尾には、なぜか「測量協力:旭川第3倉庫組合」と表示され、発売当時から小さな話題となった。
音楽[編集]
サウンドトラックは、低音のドローンと細かな金属打撃音を基調としており、全34曲で構成される。中でも「北門の午後」は、ゲーム中で最も長い12分18秒の曲で、1小節ごとに風向が変わるような構成が評価された。
また、戦闘曲「逆流詠唱・序章」は、テンポが146BPMから一瞬だけ147BPMに跳ね上がる箇所があり、これを聞き分けられると公式大会で有利になるという都市伝説が広まった。なお、霧島本人は後年の座談会で「単にミキサーの電源が不安定だった」と述べたとされるが、出典の所在ははっきりしていない。
他機種版・移植版[編集]
には向けに『崎守トウジ・再測版』が発売され、霧相の処理が簡略化された。これによりロード時間は平均43秒から19秒へ短縮され、携帯機ながら「会話の密度が濃い」と好評であった。
さらにには、の配信タイトルとして配信され、擬似3D化された背景が話題となった。ただし、一部の橋が処理落ちで常に揺れて見える不具合があり、後の修正版では「意図的な揺れ」であると説明が変更された。
評価[編集]
発売当初の初週販売本数は約14万本で、年末商戦期にじわじわ伸び、最終的に全世界累計182万本を突破した。とくに国内では攻略本と同時購入する層が多く、販売店によっては本編よりも地図用クリアファイルのほうが先に品切れした。
では優秀賞を受賞し、のクロスレビューでは36点を獲得したとされる。ただし、レビュー本文の一部が「説明書を読んでいるだけで凍える」としか書いていないため、満点回避の理由は今なお議論がある。
関連作品[編集]
本作の成功を受けて、続編『崎守トウジII 霧相の縁』および外伝『崎守トウジ 外港の午後』が制作された。前者は戦闘重視、後者は会話劇重視であり、シリーズの方向性を分けた分岐点とされる。
また、『北門封印記』は本作を題材にしたメディアミックス作品として放送されたが、トウジが第4話まで一切話さない構成が賛否を呼んだ。さらに、ボードゲーム版『崎守トウジ・標識戦争』は、原作にない「風速カード」を追加したことで、原作ファンと家族連れの双方から微妙に支持された。
関連商品[編集]
攻略本『崎守トウジ 完全測量書』は、通常のフローチャートに加え、封印杭の角度を1度刻みで示した付録が付属していた。これが便利すぎたため、逆に「自分で遊んだ気になれない」との苦情も届いたという。
書籍では、『氷壁都市クロノア 設定資料集 霧相図譜』が有名である。なお、関連書籍の中には『トウジの食卓 47日分の雪糖錠レシピ』という妙な料理本も存在し、実際にはファンによる非公式刊行物だったが、発売元が長く否定しなかったため半ば公認扱いとなった。
脚注[編集]
1. 『崎守トウジ』の正式発売日は、地域限定試供版の頒布日と混同されることがある。 2. 第七码の霧相設定は、開発会議のホワイトボード写真から再構成されたものである。 3. 同名の非公式MAP集については、当時の同人誌即売会カタログに痕跡が残る。 4. 杭打ち稼ぎの効率は、後年の検証プレイで再現された。 5. 通信ケーブル被覆の問題は、一部の地方販売分にのみ確認されたとする報告がある。
参考文献[編集]
・神崎礼治『霧相時代の設計論』星見出版、2002年。 ・御厨章吾『封塞区のつくりかた』ノクス文庫、2005年。 ・畑中ミサト『ゲーム地図学入門 崎守トウジを読む』青潮社、2009年。 ・霧島ハル『北風とFMシンセサイザー』港湾音響研究会、2004年。 ・田代一郎『プレイボックス64全史 Vol.3』デジタル倉庫社、第3巻第2号、2011年。 ・M. Thornton,
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
星見インタラクティブ 作品アーカイブ ノクス・クラフト 旧開発日誌 北門封印資料室 霧相研究会 公式年報
脚注
- ^ 神崎礼治『霧相時代の設計論』星見出版、2002年。
- ^ 御厨章吾『封塞区のつくりかた』ノクス文庫、2005年。
- ^ 畑中ミサト『ゲーム地図学入門 崎守トウジを読む』青潮社、2009年。
- ^ 霧島ハル『北風とFMシンセサイザー』港湾音響研究会、2004年。
- ^ 田代一郎『プレイボックス64全史 Vol.3』デジタル倉庫社、第3巻第2号、2011年。
- ^ M. Thornton, "The Semi-Open Town and Its Echo", Journal of Imaginary Game Studies, Vol. 8, No. 4, 2010, pp. 44-67.
- ^ 佐伯真一『冬港のRPG文化史』凍土書房、1999年。
- ^ L. Beaumont, "Wind-Based Command Delay in Console Role-Playing Systems", Interactive Fiction Review, Vol. 12, No. 1, 2003, pp. 101-129.
- ^ 高瀬和也『トウジ三部作の神話学』海鳴社、2012年。
- ^ A. N. Feld, "On the Misreading of Boundary Marks", Proceedings of the North Sea Ludology Society, Vol. 5, No. 2, 2006, pp. 7-29.
- ^ 『ファミ通クロスレビュー特集 冬の封印ゲーム大全』アスパラ編集部、1999年。
- ^ 霧崎静香『タイトル画面の政治学』白夜湾出版、2008年。
外部リンク
- 星見インタラクティブ 公式サイト
- 北門封印資料室
- 霧相研究会
- プレイボックス64アーカイブ
- ゲーム地図学オンライン