第九が如く
| タイトル | 第九が如く |
|---|---|
| 画像 | Dai-ku-ga-Gotoku_boxart.png |
| 画像サイズ | 256px |
| caption | 北区立アーカイブで発見された初期版パッケージ |
| ジャンル | コンピュータRPG、群像劇、音楽探索アドベンチャー |
| 対応機種 | ドリームボックス2、ルミナス・ポケット |
| 開発元 | 霧島インタラクティブ |
| 発売元 | 白鐘ソフトウェア |
| プロデューサー | 相沢 恒一 |
| ディレクター | 西園寺 透 |
| デザイナー | 三枝 玲央 |
| プログラマー | 長谷川 恒一郎 |
| 音楽 | 久住 まどか |
| シリーズ | 如くシリーズ |
| 発売日 | 2009年11月19日 |
| 対象年齢 | CERO B |
| 売上本数 | 国内約84万本、全世界累計126万本 |
| その他 | 初回特典として紙製の指揮棒が同梱された |
『第九が如く』(だいくがごとく、英: Like the Ninth、略称: LTN)は、2009年11月19日に日本の霧島インタラクティブから発売されたドリームボックス2用コンピュータRPG。『如く』シリーズの第9作目として開発されたが、作中では交響曲第九番を模した「九層都市」を巡る異色作として知られる[1]。
概要[編集]
『第九が如く』は、霧島インタラクティブが制作し白鐘ソフトウェアより発売されたドリームボックス2用ロールプレイングゲームである。通称は「九如く」または「第九」とされ、シリーズの第9作目にあたる[2]。
本作は、東京都下町の架空地区・九条湾岸区を舞台としているが、そこで演奏される交響曲第九番が、都市の治安・株価・路線バスの運行にまで影響するという極めて特殊な設定を持つ。ゲームシステムの特徴として、戦闘中にプレイヤーが“旋律選択”を行うことで敵の行動が変化する点が挙げられる[3]。
キャッチコピーは「歌え、殴れ、そして九度目に悟れ」である。開発当初はアクションシューティングゲームとして企画されたが、途中で協力プレイの実装が過剰に膨らみ、最終的にはストーリー重視の作品へ再編されたとされる。なお、一部の資料では“シリーズ一作目にあたる精神的前日譚”とも記載されているが、編集方針上は異説扱いとなっている[4]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
プレイヤーは主人公・九条 直人を操作し、九層に分かれた都市の各地区を巡る。基本はロールプレイングゲームだが、会話選択が戦闘音量に影響し、怒号を選ぶと敵の防御力が下がるという奇妙な仕様がある。
ゲームシステムの特徴として、「第九拍」と呼ばれる独自のテンポ判定があり、画面上の輪郭線が8拍目で点滅し、9拍目で必殺技が成立する。開発終盤には“拍ズレ補正”のためにプログラマーが1200行分の修正を行ったとされるが、ソースが残っていないため真偽は不明である。
戦闘[編集]
戦闘はコマンド選択式であるが、敵の種類により「独唱」「合唱」「無伴奏」の3系統に分かれる。とくに敵キャラクターの一部は、HPが減るほど演奏速度が上がる“加速発声”を使うため、プレイヤーは防御よりも拍手による精神安定を優先する必要がある。
また、ボス戦ではステージ背景に東京都の実在風景が映し出され、BGMのテンポに合わせて歩行者信号の色が変化する。これにより、戦闘後に「交通安全に配慮した勝利演出」として一部の地域紙で紹介された[5]。
アイテム[編集]
主要アイテムは「調律札」「半音の薬」「九連メトロノーム」などである。中でも「調律札」は、店で売ると高値だが使用すると街のBGMが一時的に変調するため、初心者には“持っているだけで損をする”アイテムとして知られている。
限定版同梱の「手回し指揮機」は、実際にはゲーム連動機器ではなく、机上で回すとセーブデータの既読率が1%上昇したように見える玩具である。これが好評を呼び、発売後3週間で追加生産が2万3000個行われた。
対戦モード[編集]
本作には「指揮対戦」と呼ばれる対戦モードがあり、プレイヤー同士が曲の拍を奪い合う。相手の拍を3つ奪うと「無音状態」が発生し、一定時間だけ全ての行動音が消える。
なお、オンライン対応版では、対戦開始時に日本全国の平均回線速度を参照してテンポが自動補正される仕様が追加された。これにより、夜間帯には異常に長い1拍が発生し、実質的に“考える時間をくれる対戦”として評価された。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、街の掲示板を読み進めることで「九章のみで構成された短編群像劇」が解放される。これは本編を補完する位置づけで、全17話のうち6話はラジオドラマ形式、2話は東京都の地下施設を模した迷路探索となっている。
一部のプレイヤーは、オフラインモードの最終章に現れる「拍の無いエレベーター」を“ゲーム史上最も静かなダンジョン”と呼ぶが、公式は特に否定していない。
ストーリー[編集]
物語は、九条湾岸区で毎年開催される「第九祭」の前夜、主人公九条 直人が消えた指揮者を探すところから始まる。都市全体で第九番が演奏されると、失踪者の記憶が街路灯に宿るという伝承があり、直人はそれを手掛かりに事件を追う。
中盤では、仲間の一人である篠原 ミレイが実は市電局の調律監査官であったことが判明し、彼女が持つ「九号鍵」によって地下音響区画が開く。そこで直人たちは、過去9回の祭礼で失われた住民票と、なぜか大量の譜面を発見する。
終盤、敵組織「無拍連盟」の首魁黒田 玄蔵は、都市を完全静寂化し“永遠の第九”を自分だけが聴く計画を進める。最終決戦では、プレイヤーが選択した旋律によってエンディングが4種類に分岐し、うち1つは主人公が指揮台の上でそのまま東京都知事選への出馬を決意するという、シリーズでも屈指の唐突な結末として語られている[6]。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
九条 直人は、元・区立音響保全課の臨時職員である。無表情だが拍を外すと異様に饒舌になる性質があり、開発陣は「シリーズでもっとも説明が多い主人公」と評していた。
仲間[編集]
篠原 ミレイは、調律監査官として登場するヒロインである。ほかに、元バス運転手の角田 剛、盲目の三味線職人白石 玲、そして九層目の住民組合長有馬 進が同行する。
とくに白石 玲は、戦闘中に味方全体のテンポを安定させる特殊能力を持ち、ファンからは「実質メトロノーム」と呼ばれている。
敵[編集]
敵対勢力の中核は「無拍連盟」である。構成員の多くは市民楽団の元団員で、拍子に関する怨恨から都市機能の停止を試みる。中ボスの黒田 玄蔵は、第九祭の保存会に30年在籍した経歴を持ち、表向きは文化功労者として扱われていた。
また、各章末に登場する「拍具の番人」は、名称のわりにほぼ全員が徒歩で移動するため、攻略サイトでは“機械化されていない敵”として分類されていた。
用語・世界観[編集]
本作の舞台である九条湾岸区は、東京都の再開発計画から漏れた地区という設定で、九つの橋、九つの商店街、九つの区画放送塔から成る。これらはすべて都市の「第九拍」を保つために設置されたとされるが、実際には制作スタッフが同じ地形データを使い回したため偶然そうなったという説もある。
世界観の中心概念は「拍」である。拍は時間単位ではなく、街の合意形成の単位でもあり、住民投票、バス発車、婚姻届の受理まで拍に依存している。これがゲーム内でやけに行政手続きが多い理由である。
一方で、資料集には“第九とは数字の9ではなく、9回目の共同記憶を意味する”と記載されており、後年のファン考察ではこれがシリーズ全体の転換点だったと解釈されている。ただし、同資料の同じページには「九層目の屋上に温泉がある」とも書かれており、整合性には難がある。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
企画の発端は、霧島インタラクティブの社内会議で「9作目は何を足しても許される」という議題が採択されたことにある。初期案では音楽ゲームであったが、テストプレイの途中でストーリー班が暴走し、最終的には“街ごと歌わせるRPG”へ変化した。
また、当初の副題は『第九、路地裏にて』であったが、法務確認の結果、タイトルが長すぎるという理由で現在のものに改められたという。
音楽[編集]
サウンドトラックは、通常版に加えて初回限定版の「拍列盤」、通販限定の「静寂盤」の3種が存在する。とくに「静寂盤」では、曲間に7秒の無音が挿入され、これが“最も贅沢な無音”として一部の批評家から評価された。
主題歌「九度目の夜明け」は、日本の男女混声合唱団によって収録され、発売後にはゲーム音楽としては珍しく東京都の公共ホールで単独演奏会が行われた。来場者は1,840人で、うち312人が指揮棒を購入したと報じられている。
一方で、音楽面の批判として「戦闘BGMが良すぎて本編を進めたくなくなる」との指摘があり、実際にプレイヤーアンケートでは23%が第3章でセーブデータを止めたという。
他機種版・移植版[編集]
2011年にはルミナス・ポケット版が発売され、移動中でも拍管理ができることから学生層に人気を博した。なお、携帯機版では都市の広さが半分になったが、これについて制作側は「都市が圧縮されたのではなく、プレイヤーの解釈が密になった」と説明している。
2014年にはバーチャルコンソール相当の配信サービス『シロガネアーケード』で再配信され、これを機に海外版の売上が1.3倍に伸びたとされる。また、2018年の完全版『第九が如く 反響エディション』ではオンライン対応が追加され、協力プレイが最大4人まで拡張された。
評価[編集]
発売当初の販売本数は初週18万2000本で、年末までに国内約84万本、全世界累計126万本を突破した。発売2か月後にはミリオンセラーを記録し、白鐘ソフトウェアの決算説明会でも「想定を9割上回る好調」と発表された[7]。
批評面では、シナリオと音楽は高く評価された一方で、テンポ判定の難しさや、会話が長すぎて実際の戦闘よりも議会運営に近いとの声があった。にもかかわらず日本ゲーム大賞相当の「特別審査員賞」を受賞し、翌年には海外メディアで“最も説明不能な傑作”の一つに選出された。
また、ファンの間では、主人公が最終盤で使う「九拍奥義」が実質的に連打ではなく拍手で発動する仕様が話題となり、発売から半年で専用の拍手練習アプリが非公式に3種類も作られた。
関連作品[編集]
本作の好評を受け、外伝『第九が如く 外伝・無音の夜』、小説版『第九が如く 失われた三拍子』、舞台化企画『第九が如く on STAGE』が展開された。特に外伝は、九条湾岸区の地下を掃除するだけの内容にもかかわらず、シリーズ最も泣けると評されている。
また、メディアミックスとしてテレビアニメ化の準備稿が存在したが、合唱パートの尺が長すぎて放送枠に収まらず、最終的に朗読劇へ転用されたという。
関連商品[編集]
攻略本としては、白鐘ソフトウェア監修の『第九が如く 完全拍導書』が発売され、全412ページのうち96ページが人物相関図に充てられていた。書籍版は売上3万6000部を記録し、付録の「拍子クリップ」が文房具店で独自に流通した。
そのほか、『九条湾岸区散策ガイド』『無拍連盟の経済学』『指揮棒の握り方入門』などの周辺書籍が刊行されたが、いずれもゲームの攻略にはほとんど役立たないことで有名である。
脚注[編集]
1. ^ ただし、初期広報では発売日が2009年11月12日と案内されていた。
2. ^ シリーズ番号の数え方には異説があり、携帯電話向け試作版を含めると第11作目とする資料もある。
3. ^ 旋律選択が敵AIに影響する仕様は、実装上は乱数テーブルの参照先変更であったとされる。
4. ^ 企画段階の文書には「シリーズ一作目にあたる精神史」と記されていたが、制作部内でも意味が共有されていなかった。
5. ^ 地域紙『湾岸日報』2009年12月3日付の記事による。
6. ^ このエンディングは海外版では編集により削除され、代わりにメインメニューで拍手だけが流れる仕様となった。
7. ^ 決算説明会の発言記録は一部が要約されており、正確な数字は公開されていない。
脚注
- ^ 相沢 恒一『第九が如く 開発日誌』白鐘ソフトウェア出版部, 2010年.
- ^ 西園寺 透『拍の都市論――九条湾岸区の設計思想』霧島インタラクティブ研究資料, 2009年.
- ^ 久住 まどか『ゲーム音楽と静寂のあいだ』音環社, 2012年.
- ^ 佐伯 俊『ドリームボックス2時代のRPG群像』遊戯文化新書, 2011年.
- ^ Margaret L. Hume, “Rhythm as Governance in Fictional Urban RPGs,” Journal of Ludic Studies, Vol. 18, No. 2, pp. 44-71, 2013.
- ^ David K. Renn, “The Ninth Beat Problem in Action-Role Hybrid Design,” Game Systems Quarterly, Vol. 9, No. 4, pp. 101-129, 2010.
- ^ 白鐘ソフトウェア広報室『第九が如く 売上報告書』社内配布資料, 2009年12月.
- ^ 中村 由里子『九拍奥義の理論と実践』北斗アート出版, 2014年.
- ^ A. T. Welles, “Silent Boss Fights and the Culture of Excessive Respect,” Interactive Sound Review, Vol. 7, No. 1, pp. 5-22, 2015.
- ^ 『第九が如く 反響エディション 公式設定資料集』白鐘ソフトウェア, 2018年.
- ^ 長谷川 恒一郎『なぜ街は歌うのか』電子遊戯技術誌 第22巻第3号, pp. 88-93, 2011年.
外部リンク
- 白鐘ソフトウェア 公式アーカイブ
- 霧島インタラクティブ 資料室
- 九条湾岸区観光促進会
- 第九が如く ファン研究センター
- シロガネアーケード 配信年表