雪女と結婚する方法
| 作品名 | 雪女と結婚する方法 |
|---|---|
| 原題 | How to Marry a Yuki-onna |
| 画像 | Yukionna_Marriage_Poster.jpg |
| 画像サイズ | 220px |
| 画像解説 | 劇場公開時ポスター |
| 監督 | 霜崎清隆 |
| 脚本 | 霜崎清隆、白瀬茉莉 |
| 原作 | 霜崎清隆 |
| 製作 | 久保田良一 |
| ナレーター | 橘冬子 |
| 出演者 | 朝倉祐介、杉本雪乃、遠野丈、真柴琴音 |
| 音楽 | 葛城ユウト |
| 主題歌 | 『氷の指輪』 |
| 撮影 | 藤枝晋吾 |
| 編集 | 相沢美紀 |
| 制作会社 | 北辰映像研究所 |
| 製作会社 | 霧降プロダクション |
| 配給 | 東北新映 |
| 公開 | 1997年11月8日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 3億4200万円 |
| 興行収入 | 18億7,000万円 |
| 配給収入 | 9億1,200万円 |
| 上映時間 | 118分 |
| 前作 | 霧の嫁入り |
| 次作 | 雪女と結婚する方法II 氷室の約束 |
『』(ゆきおんなとけっこんするほうほう)は、に公開されたの。監督は、主演は。の山間部を舞台とし、異界の婚姻儀礼をめぐる物語である[1]。
概要[編集]
『』は、半ばに流行した民俗幻想映画の潮流のなかで企画された作品である。婚姻儀礼と積雪信仰を結びつけた独自の設定により、公開当時は「恋愛映画でありながら家屋設計の資料にも見える」と評された[1]。
本作は、が東北各地で採取したとされる口承譚を再構成し、の旧炭鉱町を舞台にしたものである。雪女を「幻の異類婚姻の相手」として描いた点が特徴で、後年の研究では、地方自治体の観光振興資料と混同された観客レビューがインターネット上に大量に残されたことでも知られる[2]。
あらすじ[編集]
昭和末期の山村に帰郷した建具職人のは、屋根裏に残された古い婚姻札から、雪女と人間が正式に結婚するためには「三晩連続で同じ窓の結露を消さない」ことが条件であると知る。彼は民俗学者を名乗るの助けを借り、凍結する神社、廃線となった索道、そして毎年二月だけ開くという氷の市場を巡ることになる。
しかし、雪女であるは、結婚を望んでいるのではなく、村が百年にわたり隠してきた「雪を売る契約」を破棄するために接触していたことが判明する。終盤では、蓄冷庫の中で行われる婚礼が、実は率いる観光振興課の演出であったことが明らかになり、桐谷は愛を取るか、村の積雪データを救うかの選択を迫られる[3]。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
は、雪国の建具職人であり、窓枠の寸法を誤ると雪女に見初められないという祖母の迷信を信じている男である。演じたは、撮影に先立ち札幌市内の木工所で27日間の修業を受け、実際に障子を42枚張り替えたとされる。
は、温度差が一定値を超えると足跡が二重に見えるという特殊な存在として描かれる。彼女の衣装には、氷結防止のためにと銀箔が重ねられ、雪女でありながら「冷たいのにやけに生活感がある」と評判になった。
は、表向きは大学の助教であるが、実際には雪婚儀礼研究会の会員である。劇中で何度も手帳を落とす癖があり、そのたびに重要な呪文がページの端にだけ書かれていることが話題となった。
その他の人物[編集]
は村役場の観光振興課長で、雪女伝承をイベント化して資金を集めようとする。彼が企画した「氷上の結納式」は、公開後に3自治体で実施されたというが、実際には開催日がすべて吹雪で中止になったとする記録もある。
は物語の要所を語るナレーターで、語りの文体が妙に行政文書に近い。なお、彼女の声が入る場面では画面右下に薄く気温表示が出る演出があり、のちにテレビ放送版で字幕との整合が取れず一部が修正された。
キャスト[編集]
主要キャストには、、、らが出演した。朝倉は公開前年まで舞台俳優として知られ、本作で雪国の寡黙な職人像を確立したとされる。
脇役には、氷室の番人を演じた、村の医師役の、そして毎回違う格好で現れる「雪かき青年団」の面々が含まれる。クレジット上は8名だが、エキストラを含めると延べ143名が参加したという[4]。
スタッフ[編集]
映像制作[編集]
撮影監督のは、実写でありながら空気中の微細な結晶を強調するため、レンズ前に特注の冷却板を装着した。これにより、晴天のシーンでも常に「1分後には吹雪が来そうな」質感が出たとされる。
編集のは、婚礼の場面でのみカット割りを極端に短くし、祝儀袋の開封音が雪崩の音に似るよう調整した。美術はが担当し、廃神社の拝殿内部を1/1で再現したが、梁の高さが実在の建築基準より14cm低く、撮影後に一部セットがそのまま倉庫として使用された。
製作委員会[編集]
製作は、製作会社は、配給はである。委員会方式ではなく「積雪保証方式」と呼ばれる独自の出資枠が用いられ、降雪量が少ない年度は広告出稿が自動的に増額される条項があった。
この制度は、のちに業界誌で「異例の気象連動型映画金融」と紹介されたが、同時に会計資料の一部が気象庁の過去データと一致していたことから、実質的には地域振興予算の再包装ではないかとも指摘されている。
製作[編集]
企画[編集]
企画の起点は、がの旧家で見たという「婚礼用の雪下駄」にあるとされる。彼はこれを、雪女との婚姻が「歩くこと」ではなく「沈まないこと」によって成立する象徴だと解釈し、脚本化を進めた[5]。
また、企画段階では題名が『雪女に戸籍を取らせる方法』であったが、配給側の判断で現行題に変更された。変更理由は「行政手続きの匂いが強すぎるため」とされる。
制作過程[編集]
撮影はの近郊との山間部で行われ、全体の7割が実際の積雪下で収録された。ロケ班は毎朝、車両のタイヤに竹を巻きつけて山道を上ったといい、通行止めの回数は45日間で19回に達した。
なお、雪女役のは氷点下の条件下でも顔色を保つため、撮影中の飲料をすべて白湯に統一した。これにより、現場では「本当に結婚式の準備をしているみたいだった」と語るスタッフも多かった。
美術・CG・撮影[編集]
美術面では、古い納屋の内部に人工降雪装置を仕込み、1カットごとに降雪粒径を変えた点が注目された。CGはほとんど使われていないが、婚礼の終盤にだけ雪片の軌跡を補正するため、わずか3.2秒分のデジタル処理が入っている。
一方で、伝承上の「氷の指輪」を拡大したショットでは、実際には透明樹脂の輪に細かい塩が埋め込まれており、観客の一部からは「美しいが、どう見ても食卓塩である」との感想が寄せられた。
音楽・主題歌[編集]
音楽はが担当し、主題歌『』はのワルツとして作曲された。旋律の末尾にだけ不自然な低音が入る構成は、雪下で行われる祝言の「足を踏み外しやすさ」を表現したものとされる。
劇伴にはとを併用するなど、古層の民俗音楽と近未来的な冷却音を接続する試みが行われた。なお、サントラ盤のブックレットには「氷室に保管してください」と記され、実際に冷蔵庫で保管した購入者がいたという。
着想の源[編集]
着想の源について霜崎は、系の怪談に加え、昭和末期の温泉旅館の宴会余興を挙げたとされる。とりわけ、雪女が現れる場面の袖口の長さは、かつて長野県で見た婚礼衣装を10cmだけ誇張した結果であるという。
また、彼は「雪女は冷たい存在ではなく、待ち時間の長い相手である」と語ったとされ、これが本作全体の恋愛観を決定づけた。
興行[編集]
宣伝[編集]
宣伝では「この冬、結婚届は凍る。」というキャッチコピーが用いられた。駅貼りポスターの一部には、雪女の手元から結婚指輪が落ちるデザインが採用され、とでは同デザインの等身大パネルが設置された。
公開直前には、実際の役所窓口を模した電話相談企画が実施され、婚姻に関する問い合わせが2日間で1,800件寄せられたという。もっとも、問い合わせの半数以上は「雪女が住民票を持てるか」であったとされる。
封切り・再上映[編集]
本作はに全国62館で公開され、初週は単館系としては異例の動員を記録した。年末には内の3館でリバイバル上映が行われ、雪の少ない年ほど客足が伸びるという逆相関が観測された。
2008年にはデジタルリマスター版が上映されたが、DVD版で一部の白が青みに寄りすぎる「DVD色調問題」が発生し、愛好家の間では修正版ディスクをめぐる交換会まで開かれた。
テレビ放送・ホームメディア・海外での公開[編集]
テレビ放送ではの深夜枠で初放送され、平均視聴率は6.8%を記録した。放送版では婚礼の盃に映るスタッフの影が削除され、これが「オリジナル版より怖い」と評された。
映像ソフト化はVHS、DVD、Blu-rayの順で行われ、海外では英題『How to Marry a Yuki-onna』として、、で上映された。特にフランスでは、怪談映画ではなく「凍結資産をめぐる寓話」として紹介されたという。
反響[編集]
批評[編集]
批評家の間では、民俗学的精度と突飛な恋愛観の混在が高く評価された。一方で、婚礼儀礼の説明が妙に具体的であるため、「脚本が村の古文書と観光パンフレットの中間にある」との指摘もあった。
特に、が手帳に書く呪文の文字が毎回異なる点については、編集者によって「象徴的」とする意見と「単に筆記が雑」とする意見に分かれた[6]。
受賞・ノミネート[編集]
本作はで作品賞、美術賞、衣装賞の3部門を受賞したほか、の国際ファンタジー部門にもノミネートされた。主題歌『氷の指輪』は、地方FM局の年間リクエストランキングで8週連続1位を記録した。
また、氷点下での撮影を評価する特別賞「耐寒撮影奨励賞」を受けたが、受賞式の壇上が過度に暖房されており、登壇者の肩がみな濡れていたという。
売上記録[編集]
興行収入は、配給収入はを記録し、冬季公開の邦画としては当時上位に入る成績となった。とくにとでの館数当たり収入が突出しており、「寒い地域ほどよく売れる映画」として業界資料に残った。
なお、公開から3か月後には関連土産の売上が本編興収を超えたとする集計もあるが、これには結婚式用ミニ氷柱の売上が含まれており、映画としての成績とは別枠で扱うべきだとの異論もある。
テレビ放送[編集]
地上波初放送はの深夜帯で行われ、平均視聴率は6.8%、瞬間最高は雪女が戸口に立つ場面の11.4%であったとされる。放送当時、番組表には単なるホラー映画と記載されていたが、実際には家族向け保護者コメント付きで流れたため、録画した視聴者から「思ったより婚活番組だった」との感想が寄せられた。
その後もや地方局で断続的に放送され、特に年末寒波の時期に再放送される傾向がある。放送版は2分30秒短く、最後の婚礼シーンで雪女の手袋が片方だけ消えているが、これはCM枠調整によるものである。
関連商品[編集]
作品本編に関するもの[編集]
関連商品としては、サウンドトラックCD、婚礼札を模したしおり、結露を防ぐコースターセットが発売された。とりわけ「氷の指輪レプリカ」は、指が通らないほど小さいにもかかわらず、発売3週間で12,000個を売り上げた。
また、劇中の建具を再現したプラモデルが限定販売されたが、説明書の最後に「実際には窓を閉め切って使用してください」とあり、実用品としての流用は推奨されなかった。
派生作品[編集]
派生作品として、ラジオドラマ『雪女の戸籍簿』、漫画版『雪女と結婚する方法 外伝・氷室の朝』、そして続編映画『』がある。後者では、婚姻の相手が増えるのではなく、むしろ制度が厳格化される方向に展開した。
なお、ファン有志によって制作された舞台版では、雪女役が毎公演異なる気温で登場する演出が採用され、終演後に出演者の呼気が白くならない回は「失敗」とみなされた。
脚注[編集]
1. ^ 『霧降映画年鑑 1998年版』では公開日と興行収入が一致するが、別冊資料では製作費が約2,900万円多く記載されている。 2. ^ 地域振興資料との混同については、所蔵の閲覧票に記録があるとされる。 3. ^ 終盤の観光課による演出は、公開時のパンフレットには明記されていない。 4. ^ エキストラ数は制作会社発行の記念冊子による。 5. ^ 婚礼用の雪下駄の現物は、現在も内の個人蔵とされるが、所在は確認されていない。 6. ^ 文字の違いについては、初版台本と完成台本の差異によるものとする説がある。
参考文献[編集]
・霜崎清隆『雪国婚姻論序説』北辰映像出版、1998年。 ・白瀬茉莉『異類婚礼と地方映画』霧降書房、2001年。 ・葛西真一「冬季公開邦画の興行構造」『映画経済研究』Vol. 12, No. 3, pp. 44-67, 2004年。 ・中村里香「雪女表象の変遷と観光パンフレット」『民俗と映像』第8巻第2号, pp. 11-29, 2002年。 ・H. Thornton, "Marriage Rituals in Frosted Cinema," Journal of Imaginary Film Studies, Vol. 4, No. 1, pp. 101-128, 2006. ・K. Arai, "The Cold Bride and the Warm Contract," Asian Screen Quarterly, Vol. 9, No. 4, pp. 77-93, 2010. ・久保田良一『製作委員会ではない何か』東北新映ブックレット、1999年。 ・『雪女と結婚する方法 公式解説書』霧降プロダクション、1997年。 ・三浦冬彦「DVD色調問題の発生と修復」『映像保存通信』第5巻第1号, pp. 5-18, 2011年。 ・山岸玲子『氷の結婚式場運営マニュアル』札幌文化社、2009年。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
霧降プロダクション作品案内 東北新映アーカイブ 北海道立民俗映像アーカイブ 日本幻想映画協会データベース 雪女と結婚する方法 公式再現資料室
脚注
- ^ 霜崎清隆『雪国婚姻論序説』北辰映像出版, 1998.
- ^ 白瀬茉莉『異類婚礼と地方映画』霧降書房, 2001.
- ^ 葛西真一「冬季公開邦画の興行構造」『映画経済研究』Vol. 12, No. 3, pp. 44-67, 2004.
- ^ 中村里香「雪女表象の変遷と観光パンフレット」『民俗と映像』第8巻第2号, pp. 11-29, 2002.
- ^ H. Thornton, "Marriage Rituals in Frosted Cinema," Journal of Imaginary Film Studies, Vol. 4, No. 1, pp. 101-128, 2006.
- ^ K. Arai, "The Cold Bride and the Warm Contract," Asian Screen Quarterly, Vol. 9, No. 4, pp. 77-93, 2010.
- ^ 久保田良一『製作委員会ではない何か』東北新映ブックレット, 1999.
- ^ 『雪女と結婚する方法 公式解説書』霧降プロダクション, 1997.
- ^ 三浦冬彦「DVD色調問題の発生と修復」『映像保存通信』第5巻第1号, pp. 5-18, 2011.
- ^ 山岸玲子『氷の結婚式場運営マニュアル』札幌文化社, 2009.
外部リンク
- 霧降プロダクション作品案内
- 東北新映アーカイブ
- 北海道立民俗映像アーカイブ
- 日本幻想映画協会データベース
- 雪女と結婚する方法 公式再現資料室