うみわんこ
| タイトル | うみわんこ |
|---|---|
| 画像 | Umiwanco_cover.jpg |
| 画像サイズ | 250px |
| caption | 北洋版パッケージイラスト |
| ジャンル | 海洋探索RPG |
| 対応機種 | ドリフトボックスII |
| 開発元 | 潮嶺ソフトウェア |
| 発売元 | 潮嶺ソフトウェア |
| プロデューサー | 片桐 朔也 |
| ディレクター | 三枝 みなと |
| デザイナー | 久慈 玲央 |
| プログラマー | 折原 恒一 |
| 音楽 | 真壁 ユウ |
| シリーズ | うみわんこシリーズ |
| 発売日 | 2004年7月22日 |
| 対象年齢 | 全年齢 |
| 売上本数 | 全世界累計186万本 |
| その他 | 初回特典として「潮鳴り笛」が付属 |
『うみわんこ』(Umiwanco)は、2004年7月22日に日本の潮嶺ソフトウェアから発売されたドリフトボックスII用海洋探索RPG。シリーズの第1作目であり、のちにメディアミックス展開の起点となった[1]。
概要[編集]
『うみわんこ』は、潮嶺ソフトウェアが開発した海洋探索RPGである。プレイヤーは、潮流に反応して鳴く小型生物「うみわんこ」を相棒に、北洋の群島を巡りながら沈没船の記録を回収する。通称は「うみわん」で、発売当初はその素朴な題名から小規模な癒やし系ゲームと誤認されたが、実際には分岐数の多さと海図管理の煩雑さで知られる作品であった[1]。
本作は、1990年代末に流行した擬似ペット育成の潮流と、同時期のロールプレイングゲームにおける航海要素の増加を受けて企画されたとされる。もっとも、開発初期の企画書には「犬型海獣による沿岸行政シミュレーション」と記されていたという証言もあり、後年の編集では辻褄が合わない部分が多い[要出典]。このため、作品世界そのものが半ば伝承化して語られることが多い。
タイトルの「うみわんこ」は、新潟県の沿岸方言で「海鳴りに合わせて遠吠えする仔犬」を指す古語に由来すると説明されているが、実際には発売元の広報担当が2003年秋の社内公募で偶然採用した造語であるとされる。もっとも、のちにこの造語が水産学や民俗学の研究資料にまで引用されたことから、作品と実在の境界が曖昧になった珍しい例として扱われている。
ゲーム内容[編集]
本作のゲームシステムの特徴として、うみわんこは単なるペットではなく、潮位を聴き分ける「航法器官」として扱われる点が挙げられる。プレイヤーは餌の「塩干し鱈」と「月見貝」を与えることでうみわんこの機嫌を調整し、正しい鳴き声を引き出して進路を確保する。
戦闘はアクションシューティングゲーム風のリアルタイム方式であるが、弾丸の代わりに漂流瓶と泡を撃ち合う独自仕様であった。敵として登場する「逆潮クラゲ」は、接触すると装備を海図上の別座標へ飛ばす厄介な存在であり、序盤で挫折する原因としてよく挙げられる。
アイテムは、航海灯、乾燥昆布、錆びた羅針盤、手描きの海流表などがある。特に「半透明の桟橋」は、使用時に一度だけ水面の下に見えない足場を出現させる強力なアイテムで、競技大会では使用制限が設けられた。
対戦モードでは、2人のプレイヤーが互いのうみわんこの鳴き声を干渉させて海流を奪い合う。オフラインモードでは、NPCの船頭と会話を重ねることで隠し航路が開放されるが、条件が曖昧で、攻略本によって解釈が異なる。
システム[編集]
移動はマス目状の潮汐マップで行われるが、1ターンごとに風向きが変わるため、見た目以上に戦略性が高い。うみわんこの鳴き声は3種類あり、低音は波除け、高音は霧晴らし、中間音は沈船探知に対応する。
また、一定条件を満たすと「満潮演算」と呼ばれる特殊処理が発生し、海図の端から端へ一気に移動できる。開発者はこれを「早朝の通学路の省略から着想した」と語ったという。
戦闘[編集]
敵との戦闘では、海面のうねりを利用した斜め視点の当たり判定が採用されている。ボス戦はほぼ例外なく巨大生物との戦いであり、第3章の「灯台鯨」は、体内に3層の迷路を持つため初見殺しとして有名である。
なお、ボス撃破後に必ず「塩が1gだけ増える」仕様があり、これがシリーズ通じて最も謎めいた報酬として語られている。
アイテム[編集]
アイテムの多くは実用品を模しているが、効果がきわめて抽象的である。「潮位のしおり」はセーブ機能を兼ね、「割れた救命浮輪」は敵の視線を逸らす用途に使われる。
特に「わかめの地図」は、入手時は意味不明だが、海に近づくほど文字が浮かぶため、ファンの間では最も美しいアイテムとされている。
ストーリー[編集]
物語は、北洋の小島「潮返し島」に住む少年リオが、冬の夜に岸辺で見つけた仔犬型の海獣を保護する場面から始まる。その生物は、波の周期に合わせて鳴くため「うみわんこ」と呼ばれ、島に伝わる「沈む灯台」の伝承と深く関わっている。
リオはやがて、海底に埋もれた古文書「潮記録簿」を回収する役目を負うが、その過程で港湾局の臨時調査班や、海流を私有化しようとする密貿易組織「黒い帆網」と対立する。物語後半では、島そのものが可動式の観測装置であったという事実が明かされるが、唐突すぎるため批評家の間でも賛否が分かれた。
終盤、うみわんこは海底火山の噴気孔を鎮めるため、自ら潮鳴りを停止する選択を迫られる。エンディングは複数存在するが、最も知られるのは、リオが浜辺で新たな鳴き方を教わり、翌朝には島の全住民がなぜか同じ節で目覚める結末である。ここで流れるスタッフロールは平均18分42秒とされ、当時の家庭用ゲームとしてはやや長い部類に入る[2]。
主人公[編集]
主人公のリオは、設定上12歳であるが、船舶免許の知識を異様に持つことで知られる。感情表現は少ないが、うみわんこの鳴き声を聞き分ける才能があり、作中では「潮の訳者」と呼ばれる。
プレイヤーの選択によって、彼は記録者、修繕士、あるいは海路の統治者としての側面を強める。
仲間と敵[編集]
仲間には、船大工のマヤ、潮見測候所の見習いであるトオル、そして常に干物を背負っている老女ハルがいる。敵側では、黒い帆網の代表「ミスト船長」が圧倒的な存在感を放ち、彼の名刺には肩書きが七行も印刷されている。
なお、隠し仲間として「しゃべるブイ」が存在するという噂が長らく語られたが、公式には否定されていない。
用語・世界観[編集]
作中世界では、海は単なる水域ではなく、記憶を保存する媒体とされている。そのため、沈没船の残骸からは装備ではなく会話の断片が見つかり、プレイヤーはそれを読み解くことで航路を再構成する。
「潮位言語」という独自の用語体系も登場する。これは、うみわんこの鳴き声、灯台の点滅、潮の匂いの3要素から構成されるとされ、作中の学者たちはこれを準言語学の一種として扱っている。実在の研究と混同する向きもあったが、学会報告では「語彙の半分が貝殻に依存する」と記され、やや議論を呼んだ。
また、海図上に現れる「白い渦」は、同じ場所に3回入ると別の年へ接続する現象である。制作側は「海の中の改札」と説明したが、プレイヤーにはほとんど理解されず、むしろ名物として受け入れられた。
設定[編集]
世界の地形は、満潮と干潮で毎日わずかに変化する。港町は7つ存在し、そのうち4つは実在の地名に似た語感を持つが、互いの距離関係が明らかにおかしい。
特筆すべきは「逆さ灯台」で、灯火が海底を照らす。これにより、魚群が上空へ避難する描写が挿入され、当時の子ども向け作品としては妙に詩的であった。
用語[編集]
「潮鳴り」はうみわんこの鳴き声を意味し、「欠潮」は海路が記憶喪失に陥る現象を指す。後者は攻略上きわめて重要であり、セーブデータの消失を示唆するメタファーとして読まれることもある。
なお、これらの用語は発売後にファンによって整理されたもので、初版マニュアルでは一部が手書き修正されていた。
開発[編集]
『うみわんこ』は、潮嶺ソフトウェア第三開発室で、2002年末から制作が始まったとされる。きっかけは、同社が社屋近くの防潮堤で保護した雑種犬が、夜ごとに海へ向かって吠えたことだという。これが企画原案の「波を読む犬」の着想になったとされるが、実際には会議資料にだけ残る逸話であり、真偽は定かではない[要出典]。
制作経緯としては、当初アクションシューティングゲーム案だったものが、社内で「海の管理を学べる教育性」が強調され、最終的に海洋探索RPGへ変更された。さらに、ディレクターの三枝みなとは「鳴き声の間に間があるゲームはよいゲームである」と述べ、演出の9割を沈黙が占める設計に固めたという。
スタッフは少人数で、総勢14名の体制であった。うち3名は実際に港湾作業のアルバイト経験者で、潮位の表現に細かく口を出したとされる。結果として、当初予定されていた夏発売は3回延期され、最終的に2004年の発売となった。
制作経緯[編集]
企画初期には、うみわんこは乗り物として扱われていたが、テストプレイの結果「乗るとかわいそう」という意見が多数を占め、相棒へと変更された。これにより、ゲーム内で犬系生物が加速するときだけ波紋が四角くなる、という奇妙な仕様が残った。
また、海図の作画には国土地理院出身の外部スタッフが参加したと噂されるが、本人は後年「地図の線を引いただけ」とだけ語っている。
スタッフ[編集]
プロデューサーの片桐朔也は、発売前のイベントで「犬を飼ったことはないが、潮は飼っている」と発言し、会場を静まり返らせた。音楽担当の真壁ユウは、貝殻とチューブを組み合わせた自作楽器を用い、海鳴りを実録風に録音している。
なお、エンディングテーマの制作には、近隣の高校吹奏楽部が協力したとされるが、クレジット上は「地域の皆様」にまとめられている。
音楽[編集]
サウンドトラックは、笛、打楽器、波音のサンプリングを中心に構成されている。特にタイトル曲「潮騒と仔犬」は、4拍子で始まりながら途中から5拍子にずれるため、発売当時は「酔うほど美しい」と評された。
真壁ユウによるBGMは、海面の広がりを思わせるアンビエント寄りの曲調と、突然挟まる民謡風フレーズの落差が特徴である。中でも「逆さ灯台の夜」は、1分14秒ごとに遠くで犬が吠える音が入り、プレイヤーに不安を与える効果がある。
サウンドトラックCDは2005年に単独発売され、初回盤には「無音トラック」が3曲収録されていた。これがファンの間で「最も贅沢な曲」と呼ばれ、後年の再販版では逆にカットされている。
サウンドトラック[編集]
アルバム『Umiwanco Original Sound Waves』は全27曲で構成され、曲名の大半が天候と潮汐を併記したものだった。購入特典として、紙製の海図しおりが付属した。
一部の曲はゲーム未使用であり、「深層の子守歌」は実装直前に削除されたが、ファン投票で現在もシリーズ最高曲の一つとして扱われている。
他機種版・移植版[編集]
本作は後に2006年にポートアーク版、2008年にミラージュハンド版へと移植された。いずれも携帯性を高めるために海図の縮尺が変更され、特にポートアーク版ではうみわんこの鳴き声がボタン1つで出せる仕様が好評であった。
また、2011年には仮想配信サービス「アーカイブ港」で再配信され、バーチャルコンソール対応に相当する形式として紹介された。なお、再配信版では海面の色がやや濃くなっており、ファンの間では「港の事情による」と解釈されている。
海外では『Sea Wanco』の題で限定発売されたが、現地ではタイトルを犬種の一種と誤解する人が多かったとされる。
移植版[編集]
ポートアーク版は読み込みが速い反面、潮位演算の精度が低く、特定の条件で島が1マスずれる不具合があった。ミラージュハンド版では通信対戦が強化され、周囲の1.5メートル以内にいるプレイヤー同士でのみ協力プレイが成立した。
この奇妙な仕様は、会場デモでの混線を防ぐためだったと説明されている。
評価[編集]
『うみわんこ』は発売初週で8.4万本を販売し、その後口コミで伸長して全世界累計186万本を突破した。特に沿岸部の店舗での売れ行きがよく、海辺の書店では攻略本より先に魚拓用紙が売れたという逸話がある。
批評では、独創的な世界観と「ゲームを進めるほど説明書が必要になる」複雑さが同時に評価された。レビューサイト『Game Lantern』では平均87点を記録し、「小さな犬が大きな海を動かす稀有な作品」と評された。
一方で、終盤の航路制御は不親切との批判もあり、特に第9章の「赤潮迷宮」は、攻略情報なしでは到達率が4%前後と分析されている。もっとも、この数字の出典はファン有志の聞き取りに依存しており、信頼性には疑問が残る。
売上[編集]
初動8.4万本、海外向け再販を含めた1年目集計で71万本、シリーズ累計では220万本前後とみられる。なお、2004年の年末商戦では、同梱版が「海の匂いがする」と誤って紹介され、販促ポスターが一部差し替えられた。
また、地方自治体の観光課が本作とタイアップした結果、宿泊客が増えたとする報告もあるが、ゲーム起因かは断定されていない。
関連作品[編集]
直接の続編として『うみわんこ 潮騒の遺跡』(2007年)、『うみわんこ 逆流の王冠』(2010年)、外伝『うみわんこ ときどき岬』(2012年)がある。いずれも海洋探索と生物育成を軸にしているが、作品ごとにジャンルの比率が異なり、特に外伝はほぼ会話劇である。
また、派生作として、落ちものパズル『うみわんこ しおだまりブロック』、携帯向けの短編『うみわんこ 3分航海』が制作された。後者はプレイ時間が実質3分では済まないとして、当時のユーザー掲示板で軽く話題になった。
テレビアニメ化されたという噂も流れたが、実際には地方局の天気予報枠でうみわんこのイラストが1週間だけ使われたことが、その発端であるとされる。
関連作品[編集]
シリーズ関連商品としては、海図型ノート、潮鳴り笛レプリカ、うみわんこぬいぐるみがある。いずれも一度に大量生産されず、港町のイベントで少しずつ販売された。
特にぬいぐるみは、首元の鈴が潮の満ち引きで鳴る仕組みになっていると宣伝されたが、実際には歩くたびに鳴るだけであった。
関連商品[編集]
攻略本『うみわんこ完全潮流読本』は2004年末に刊行され、地図の誤記が多いことで有名である。もっとも、誤記の一部は後のプレイヤー間で「正しい遊び方」として定着し、結果的に本編よりも影響力を持ったとされる。
書籍としては、開発秘話をまとめた『潮鳴りの設計図』、設定資料集『Umiwanco World Notes』、児童向けの絵本『うみわんこの しおあそび』がある。最後の一冊は、内容よりも表紙の犬がやけに現実的であることで知られている。
その他、限定版の鉄製ブックエンド、貝殻模様のメモ帳、海流図入りトランプなどが販売された。うちトランプは数字の代わりに潮位が書かれており、実用性は低いがコレクター人気は高い。
攻略本[編集]
攻略本は「航海日誌」として構成され、章の最後に必ず編集部の試行錯誤が記されていた。とくに第6章では、編集者が3日間同じ港に留まり続けた記録が残る。
この本は後年、ファンの間で半ば公式資料として扱われ、逆にゲーム本編の説明不足を補う役割を担った。
脚注[編集]
1. なお、初回出荷版の一部には、タイトルロゴの波線が上下反転して印刷された個体が存在する。
2. スタッフロールの長さは地域版によって異なるが、最長は北洋版の19分03秒とされる。
注釈[編集]
本作の「海洋探索」は、実際には8割が港の倉庫整理である。
また、うみわんこの鳴き声は犬に近いが、収録時にはカモメの鳴き声が半分混ざっている。
出典[編集]
架空の社史、ゲーム雑誌、港湾観測年報などに基づくとされるが、詳細な書誌は散逸している。
外部リンク[編集]
潮嶺ソフトウェア 公式アーカイブ
うみわんこ 作品資料室
北洋ゲーム博物館デジタル展示
海図編集会議 記録ページ
Umiwanco Fan Maritime Wiki
脚注
- ^ 片桐朔也『海鳴りと犬型航法の設計』潮嶺出版, 2005, pp. 41-68.
- ^ 三枝みなと「『うみわんこ』における潮位入力と擬似情動」『デジタル遊戯研究』Vol.12, No.3, 2006, pp. 115-129.
- ^ 真壁ユウ『潮音楽の作法』港北書房, 2005.
- ^ 森下由紀「北洋圏における海獣伝承とゲーム表象」『民俗と媒体』第8巻第2号, 2007, pp. 77-93.
- ^ Andrew Bell, “The Umiwanco Problem: Mapping Sentient Tides in Home Console RPGs,” Journal of Imaginary Game Studies, Vol. 4, No. 1, 2008, pp. 9-34.
- ^ 久慈玲央『海図の余白に描かれた犬たち』潮嶺アートライブラリ, 2006.
- ^ 佐伯百合「攻略本が本編を凌駕した事例としての『うみわんこ』」『出版研究季報』第19巻第4号, 2009, pp. 201-218.
- ^ Margaret A. Thornton, "Maritime Companion Creatures in Early 2000s Software," Pacific Interactive Review, Vol. 7, No. 2, 2010, pp. 52-71.
- ^ 『Umiwanco World Notes』潮嶺ソフトウェア資料室, 2004.
- ^ 藤堂一成『潮騒のゲーム史入門』海鳴社, 2012, pp. 144-149.
外部リンク
- 潮嶺ソフトウェア 公式作品紹介
- うみわんこシリーズ資料館
- 北洋レトロゲーム保存協会
- 海図と犬の民俗学アーカイブ
- Umiwanco Memorial Page