あつまれガチャピンDS WW2編
| タイトル | あつまれガチャピンDS WW2編 |
|---|---|
| 画像 | Gather_Gachapin_DS_WW2.jpg |
| 画像サイズ | 256px |
| caption | 北方戦線を走るガチャピン |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | ニンブルポートDS |
| 開発元 | 東雲インタラクティブ |
| 発売元 | ホライゾン・プレイ |
| プロデューサー | 片桐玲央 |
| ディレクター | 南條みどり |
| デザイナー | 久我山ハル |
| プログラマー | 深町修二 |
| 音楽 | 大石ユウジ |
| シリーズ | あつまれガチャピンシリーズ |
| 発売日 | 2009年11月19日 |
| 対象年齢 | CERO B相当 |
| 売上本数 | 国内累計84万本 |
| その他 | マップ同梱版あり |
『あつまれガチャピンDS WW2編』(あつまれガチャピンディーエス ダブルダブルツーへん、英: Gather Gachapin DS: WW2 Edition、略称: AGD-WW2)は、2009年に日本の東雲インタラクティブから発売されたニンブルポートDS用アクションシューティングゲーム。『あつまれガチャピン』シリーズの第3作目にあたり、通称は「戦場のガチャピン」とも呼ばれる[1]。
概要・概説[編集]
『あつまれガチャピンDS WW2編』は、東雲インタラクティブが企画した、第二次大戦をモチーフにした架空戦記風のアクションシューティングゲームである。プレイヤーは赤い装甲服を着たガチャピン隊長を操作し、北海戦域からアルプス回廊までの十数地域を巡る。
本作は、子ども向けキャラクター作品として知られる『あつまれガチャピン』シリーズの中でも、異様に硬派な作風で知られている。発売当時は「教育的に見えて、最終的に戦術地図の暗記を要求される」と評され、シリーズの第3作目でありながら独立した戦争アドベンチャーとして受け止められた。
なお、タイトルのWW2は「World Wide Tomato 2」の略であるという説明がパッケージ裏に記されていたが、実際には販促会議で誰かが“それっぽく見える”と押し切っただけとされる[2]。この曖昧さが結果的に、コア層の考察文化を生んだと指摘されている。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、見下ろし型のアクションシューティングゲームでありながら、盤面の一部が毎ターン地形変化する「ぬかるみ補給線」が挙げられる。プレイヤーは前進・斜線射撃・旗立ての3操作を使い分け、敵陣の小屋を攻略する。
また、同じ面を3回連続でクリアすると「士気メーター」が最大となり、ガチャピンが突然敬礼ポーズのまま高速移動する。これを開発陣は“モラルダッシュ”と呼んでいたが、社内では単に「速すぎるから危険」として調整対象になっていた。
戦闘[編集]
戦闘はロールプレイングゲーム風の行動選択と、弾幕回避を組み合わせた折衷型である。主人公は「雪球砲」「缶詰爆雷」「冬帽子シールド」などを装備でき、特に冬帽子シールドは敵の心理攻撃を1回だけ無効化する。
中盤以降は協力プレイにも対応し、最大2人で「地図係」と「前線係」に分かれて進軍することが可能である。ただし、地図係が誤って橋を指示すると全員が補給廠に転落するため、発売後しばらくは“友情破壊モード”として知られていた。
アイテム[編集]
アイテムは戦場で拾う方式で、代表的なものに「乾パンチケット」「即席の塹壕」「赤いスコップ」などがある。中でも「赤いスコップ」は、掘るだけでなく敵の士気を下げる効果があり、説明書には「戦いは土木から始まる」と書かれていた。
なお、極めて低確率で出現する「謎のケチャップ壺」は、使用するとマップ上の全ユニットが一斉に整列する。攻略本では“隠し平和アイテム”として扱われたが、実際にはバグか仕様かで今なお議論が分かれている。
対戦モード[編集]
対戦モードでは、最大4人がそれぞれ要塞・補給車・偵察気球・給食班を担当し、勝敗は最終的な食糧残量で決まる。純粋な撃ち合いではなく、補給線の切断と誤配達が主題となっている点が独特である。
オンライン対応版では、2009年当時としては珍しく「降参スタンプ」が標準搭載されていた。これにより、通信対戦の終盤における無言の圧力が減ったとされるが、逆にスタンプ連打による通信切断が発生し、発売後1か月で修正版が配布された。
オフラインモード[編集]
オフラインモードには「訓練日誌」と呼ばれる短編キャンペーンが収録されている。ここでは、北方雪原の前哨基地を修理したり、避難小屋のパンを3日分だけ守り抜いたりするミッションが多い。
エンディングは全部で7種類あり、最終的にガチャピンが戦車を牽引して帰還するルートが最も有名である。制作側は「子ども向けの達成感を担保した」と説明したが、実際にはスタッフの誰かが“どうせなら引っ張って帰れば面白い”と言い出したことが起点とされる。
ストーリー[編集]
物語は架空の欧州大陸に存在する中立国トマリカ共和国が、謎の「白い煙幕軍」に包囲されるところから始まる。主人公のガチャピン隊長は、和平使節として派遣されるが、到着直後に司令塔ごと移動式食堂へ配属される。
中盤では、旧図書館の地下から発見された「赤鉛筆の暗号書」が戦況を左右する。ここで示される座標が、実は列車の時刻表と補給路を兼ねており、プレイヤーは毎章ごとに発車時刻に間に合うよう移動する必要がある。
終盤、敵将のベルンハルト・クライン少将は「戦争の勝敗は弾薬ではなく、誰が最後にスープを温かく保てるかで決まる」と宣言する。ガチャピンはこれに対し、巨大な保温箱を戦車に接続して勝利するが、エンディング直後に全員で炊き出しを始めるため、軍記物としてはやや締まりに欠けるとされる。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
ガチャピン隊長は、本作の主人公である。元は偵察部隊の案内役として設定されていたが、企画会議で“機動力が高すぎる”と判断され、最終的に戦車も徒歩で追い抜く仕様となった。
演出上は無口だが、特定のミッションでだけ「了解であります」という音声が再生される。収録回数は17語しかないにもかかわらず、声優の収録時間は当初予定の6倍になったとされる。
仲間[編集]
仲間キャラクターには、地図担当のミドリ伍長、補給係のレモン大尉、無線機に詳しいフクロウ技師などがいる。中でもレモン大尉は、弾薬庫でレモン水を配るだけの役回りだったが、プレイヤー人気が高く、後に単独の外伝小説まで出た。
また、隠し仲間の「歩く炊飯器」は、条件を満たすと夜間戦闘に参加する。これは開発当初、単なる背景オブジェクトだったものを、デバッグ担当が誤って会話可能にしたことが始まりである。
敵[編集]
敵勢力「白煙連隊」は、統制の取れた部隊というより、書類の角で戦うタイプの組織として描かれている。各ステージのボスはそれぞれ異なる補給思想を持ち、ガソリン重視派、保存食重視派、旗色重視派に分かれている。
最終ボスのクライン少将は、実在の軍人名に似せた名前でありながら、なぜか毎回戦闘前に切手収集の話をする。これにより、プレイヤーの間では「史実の重みを誤った方向へ再現した人物」として語り草となった。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、第二次世界大戦に相当する出来事が「大トマト戦役」として記録されている。地図上の国境線は固定されておらず、毎月第2木曜日に補給量に応じて少しだけ動く設定である。
さらに、各地に存在する「前線公民館」は、戦時中の集会所であると同時に、村人の献立を決める機関でもある。制作資料によれば、これは“戦争を食事と行政の延長として捉える”ための設定だったとされる。
なお、ゲーム中で頻出する「WW2」は先述の通りWorld Wide Tomato 2の略とされるが、別資料では「White Wind 2」とも書かれている[3]。この揺れは、ローカライズ段階で3つの略称案が混在した結果と考えられている。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
企画は2007年秋、東雲インタラクティブが携帯機向けに“教育的で、なおかつ少し物騒な作品”を模索していた時期に生まれた。もともとは測量ゲームとして立ち上がったが、会議中にガチャピンの着ぐるみ資料が誤配され、戦争ゲームへと方向転換したとされる。
プロデューサーの片桐玲央は当初、第二次大戦を扱うことに慎重だったが、社内プレゼンで「キャラクターが平和を学ぶなら、まず補給からだ」と説得され承認したという。なお、この会議の議事録は一部しか残っておらず、出席者の証言も微妙に食い違っている。
音楽[編集]
サウンドトラックは、ブラスバンド調の戦闘曲と、木管中心の村落曲に大別される。とくにステージ4「霧の野戦病院」は、わずか24小節の主題を変奏だけで8分近く引き延ばす構成で、ファンの間では名曲として扱われている。
主題歌「進め、赤い朝食」は、作中のキャッチコピー「朝食の準備は、進軍の準備だ」と連動して制作された。発売後にはニンブルポートDS本体の音源限界を逆手に取り、わざとノイズを残した“軍用ラジオ版”が限定配信された。
他機種版・移植版[編集]
2011年にはポータブル・リーフ向けに再編集版『あつまれガチャピンDS WW2編EX』が発売された。こちらはタッチ操作が改良され、補給車の移動が滑らかになったことで、シリーズファン以外からも“妙に遊びやすい戦争ごっこ”として注目された。
また、社内資料ではバーチャルコンソール対応の検討も行われたが、画面外に退避する小屋の処理が難航し、最終的に見送られた。なお、体験版だけは2009年末に一部店舗の通信端末へ配信され、これが事実上の初出となった。
評価[編集]
発売初週の販売本数は約11万本、年度末までに国内累計84万本を突破したとされる。携帯機向けのキャラクターゲームとしては異例の伸びを示し、特に小学校高学年から戦史好きの成人層まで、購入者層が極端に広かった。
一方で、レビューでは「子ども向けの顔をした準シミュレーションゲーム」「説明書のほうが戦争をしている」といった感想が目立った。日本ゲーム大賞の選考会では話題作として取り上げられたが、最終的には“分類不能な魅力”という理由で特別奨励扱いとなった[4]。
関連作品[編集]
本作の直接の前作は『あつまれガチャピンDS うみのてっぽうへん』であり、シリーズ一作目にあたる『ガチャピンのひみつ作戦』とは世界観を共有していない。後年には派生作『あつまれガチャピンDS 兵站の日曜日』が制作され、補給だけを延々と続ける内容で一部の支持を得た。
また、メディアミックスとして、2010年に短編ラジオドラマ、2012年に絵本化、2014年に舞台朗読会が実施された。テレビアニメ化は見送られたが、企画書上では“日曜朝7時に放送できる戦争”として検討された形跡がある。
関連商品[編集]
関連商品としては、攻略本『完全補給マニュアル』、設定資料集『ガチャピン戦時日誌』、および折りたたみ式の紙製戦車模型が発売された。攻略本には、通常プレイでは見つからない「第5炊事区画」の行き方が掲載され、プレイヤーの一部はそれを目的に本編を周回した。
ほかに、駅売店向けに発売された携帯スープカップ、着脱式の迷彩シール、軍帽型ポーチなどがある。とくに迷彩シールは東京都港区のイベントで無料配布され、当日中に3,000枚が配布終了したという。
脚注[編集]
注釈[編集]
[1] 作中では「シリーズ第3作目」とされるが、販促チラシでは第4作目と数えられている。
[2] 企画書の一部には「WW2=World Wide Tomato 2」と明記されているが、印刷が薄く判読困難である。
[3] 公式資料の表記揺れについては、発売直後に配布された訂正シールの存在が確認されている。
出典[編集]
参考文献[編集]
片桐玲央『携帯機における戦争表現の軽量化』ホライゾン・プレス, 2010年.
南條みどり『補給線はどこへ消えたか』東雲出版, 2011年.
大石ユウジ『ノイズで鳴る軍楽論』サウンドアーカイブ社, 2012年.
伊藤晴彦『あつまれガチャピンDS WW2編 設定解体新書』北風書房, 2009年.
Margaret L. Thornton, "Portable War Games and Moral Dash Mechanics," Journal of Fictional Ludology, Vol. 18, No. 2, pp. 114-139, 2013.
Kenji Sakamoto, "The Tomato Front: Tactical Comedy in Japanese Handheld Software," Game Studies Quarterly, Vol. 9, No. 1, pp. 44-63, 2011.
黒川由里子『ニンブルポートDS時代の奇妙な傑作群』赤葉新書, 2016年.
Thomas A. Greer, "The Smell of Soup in Military Sound Design," Audio & Play Research, Vol. 7, No. 4, pp. 201-219, 2014.
『あつまれガチャピンDS WW2編 公式ガイドブック』東雲インタラクティブ監修, 2009年.
渡辺精一郎『戦場とお弁当箱の民俗学』港湾文化出版社, 2015年.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
東雲インタラクティブ 公式アーカイブ
ガチャピン戦時資料館
ニンブルポートソフト保存会
架空ゲーム年表データベース
補給線研究センター
脚注
- ^ 片桐玲央『携帯機における戦争表現の軽量化』ホライゾン・プレス, 2010年.
- ^ 南條みどり『補給線はどこへ消えたか』東雲出版, 2011年.
- ^ 大石ユウジ『ノイズで鳴る軍楽論』サウンドアーカイブ社, 2012年.
- ^ 伊藤晴彦『あつまれガチャピンDS WW2編 設定解体新書』北風書房, 2009年.
- ^ Margaret L. Thornton, "Portable War Games and Moral Dash Mechanics," Journal of Fictional Ludology, Vol. 18, No. 2, pp. 114-139, 2013.
- ^ Kenji Sakamoto, "The Tomato Front: Tactical Comedy in Japanese Handheld Software," Game Studies Quarterly, Vol. 9, No. 1, pp. 44-63, 2011.
- ^ 黒川由里子『ニンブルポートDS時代の奇妙な傑作群』赤葉新書, 2016年.
- ^ Thomas A. Greer, "The Smell of Soup in Military Sound Design," Audio & Play Research, Vol. 7, No. 4, pp. 201-219, 2014.
- ^ 『あつまれガチャピンDS WW2編 公式ガイドブック』東雲インタラクティブ監修, 2009年.
- ^ 渡辺精一郎『戦場とお弁当箱の民俗学』港湾文化出版社, 2015年.
外部リンク
- 東雲インタラクティブ 公式アーカイブ
- ガチャピン戦時資料館
- ニンブルポートソフト保存会
- 架空ゲーム年表データベース
- 補給線研究センター