バトルフィールド100
| タイトル | バトルフィールド100 |
|---|---|
| 画像 | Battlefield100_title.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 国内版パッケージ |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | メビウス68、キメラ64、セントラル・ハンド |
| 開発元 | 北東工業電脳研究所 |
| 発売元 | セントラル・メビウス出版 |
| プロデューサー | 黒崎 恒一 |
| ディレクター | 小谷部 玲子 |
| デザイナー | 宮前 透 |
| プログラマー | 風見 恒一郎 |
| 音楽 | 三枝 朱里 |
| シリーズ | Battlefield series |
| 発売日 | 1989年11月17日 |
| 対象年齢 | 15歳以上推奨 |
| 売上本数 | 全世界累計412万本 |
| その他 | 通称は「百戦」 |
『バトルフィールド100』(英: Battlefield 100)は、1989年に北東工業電脳研究所が考案したアクションシューティングゲームである。正式には100枚の戦場盤を切り替えながら戦術を組み立てる「可変戦線式対戦作法」とされ、後にセントラル・メビウス出版より家庭用に再構成された[1]。
概要[編集]
『バトルフィールド100』は、100の戦域を順に攻略していく形式を採用したアクションシューティングゲームである。プレイヤーは無名の通信士として操作するが、実際には「戦場そのものを編集する」権限を持つことが物語上の核になっている。
本作は当初、東京都武蔵野市の業務端末向け訓練装置として設計された経緯があり、その名残として、画面上の地形が毎秒ごとに微妙に組み替わる独特の挙動を持つ。これが「100枚の地図を撃ち抜くゲーム」と呼ばれる由来である[2]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、1ステージごとに戦線プレートと呼ばれる薄型マップを差し替えながら進行する方式が採用されている。これは実際にはROM容量不足を隠すための苦肉の策であったが、結果として「戦場が呼吸する」と評された。
また、敵の弾幕は単純なロールプレイングゲーム風の数値処理で決定され、命中判定は「風速」「士気」「前線の湿度」の3要素で算出される。なお、湿度は開発終盤に急遽追加されたため、一部の攻略本では要出典扱いとなっている。
戦闘[編集]
戦闘はアクションシューティングゲームとしては珍しく、攻撃よりも「退避命令」の入力が重要である。プレイヤーは主砲、補助砲、信号弾の3系統を切り替えながら、敵陣の中枢にある“仮想通信塔”を破壊する。
ボス戦では、巨大戦車や無人機ではなく、しばしば「会議室」「補給帳簿」「前線道路工事」そのものが敵として扱われる。とくに第47戦域の“移動式予算会議”は、シリーズ屈指の難所として知られている。
アイテム[編集]
アイテムは弾薬のほか、地形を一時的に固定する杭打ちピン、敵の命令系統を逆転させる反号笛、三回だけ戦線を巻き戻せる白紙命令書などがある。最も希少なのは折り畳み前線で、これを使用すると、画面の左右が入れ替わるだけでなく音楽まで反転再生される。
一部のアイテムには使用期限があり、セーブデータの内部時計が昭和64年を超えると自動的に腐食する設定になっていた。これは当時の家庭用端末の時刻管理に依存した仕様であるとされている。
ストーリー[編集]
物語は、百の戦域が一夜にして地図から“欠落”したリヴィア連合圏を舞台としている。主人公は通信兵アルト・セイラであり、命令系統を失った部隊の代わりに、100枚の戦場盤を一枚ずつ復旧させていく。
終盤では、戦争そのものが敵ではなく、戦場を数値化した官製システム“第零司令”が暴走していたことが明かされる。これにより、敵兵は消滅しても戦報だけが増え続けるという、当時としては異例の終戦表現が採用された。
ラストシーンでは、主人公が最後の戦線を封印するのではなく、100枚目の盤を裏返して「平時」を起動する。ここで流れるBGMは、前半の戦闘曲をハ長調に無理やり移調したもので、当時の子ども向け番組のようだと批判された一方、後年は高く評価された。
登場人物[編集]
主人公[編集]
アルト・セイラは、公式には“無線士”とされるが、実際には戦場編集権限を持つ特別要員である。寡黙な人物として描かれるが、戦闘中の選択肢ではなぜか毎回「やむを得ない」を選ぶ癖があり、これがシリーズの定番ネタになった。
仲間[編集]
仲間には、補給将校のミレーナ・ヴォーク、地図修復士のノブ・ハヤミ、そして戦域翻訳機を抱えた自律端末Q-19がいる。とくにQ-19は、敵の通信を解析するたびに詩のような警告文を返すため、ファンの間で最も人気が高い。
ミレーナは戦闘能力が低いが、特定の章で彼女を同行させると、補給路に東京都の地下鉄駅名が混入するバグがあり、攻略コミュニティでは“駅名グリッチ”と呼ばれていた。
敵[編集]
敵勢力は灰色同盟と総称されるが、実態は統一された軍ではなく、戦争を継続することで予算を確保する複数の準官庁である。各司令は互いに敵対しているため、同じマップ内で内輪もめを起こすこともある。
最終ボスは「総戦況長官・エルンスト・ヴァイゼ」で、巨大兵器ではなく100枚の議事録を盾にして戦う。プレイヤーは彼の持つ会議用拡声器を破壊しなければならない。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、戦争は地形ではなく“文書”として存在する。地図、命令書、通達書、反省文がそのまま地形を形成し、紙の折れ目が山脈、ホチキス跡が要塞として扱われる。
代表的な用語に、戦場を一枚のカードとして数える戦線プレート、前線を固定する杭打ち機構、敵の視界を曇らせる霧払いなどがある。特に霧払いは、本来は清掃用語から転用されたものであり、開発チームが清掃会社の会議を誤って戦術講義として記録したことが由来とされる。
また、ゲーム内の年代表記は西暦ではなく“累戦年”で表示される。これにより、プレイヤーは第83戦域の時点で既に1932年と2001年を同時に通過しているような感覚を味わうことになる。
開発[編集]
制作経緯[編集]
開発は1987年、神奈川県川崎市の会議室で開始された。もともとは軍事シミュレーターの試作であったが、部品調達の都合により、戦域の表示を紙と透明フィルムで切り替える方式へと変わった。
企画当初のタイトルは『100戦目の朝』であったが、営業部の提案で現在の題名になった。なお、最初の社内評価では「名前だけで強そう」として即採用されたという。
スタッフ[編集]
ディレクターの小谷部玲子は、前職で鉄道模型の配置設計を担当していた人物で、戦線の分岐構造にその経験が生かされたとされる。プロデューサーの黒崎恒一は、発売前に「100面あっても遊ぶのは1面ずつだから軽い」と説明し、関係者を納得させた。
音楽担当の三枝朱里は、戦闘曲のリズムに実在の工場の始業ベルを録音して混ぜ込んだとされるが、公式資料ではその工場名がぼかされている。これが後に“機械的な郷愁”として再評価された。
音楽[編集]
本作のサウンドトラックは、メロディよりも通信音と警報音の配置で緊張感を作る方式が特徴である。特にタイトル曲は、起動音からそのまま戦闘曲へなだれ込む構成で、発売当時の雑誌では「耳が先に前線へ出る」と評された。
サントラ盤はセントラル・メビウス出版の音楽部門から限定発売され、初回分2万5000枚が3日で完売した。収録曲のうち「戦線100・終端」は、実際のゲーム内では1.8秒しか使われないにもかかわらず、ファン投票で人気第1位を取ったことで知られている。
また、隠しトラックとして、開発室の空調音をそのまま逆再生した曲が入っており、深夜に聴くと“敵の増援が来る気配がする”として怖がられた。
他機種版・移植版[編集]
1991年にはキメラ64版が発売された。こちらは処理性能の制約から戦域数が100から73に削減されたが、その代わり一部の地図が立体化され、かえって難易度が上がった。
1994年にはセントラル・ハンド向けに携帯版が移植され、片手で操作することを想定した“親指戦術”が流行した。なお、この版はバーチャルコンソール対応ではないが、配信事業者の社内資料ではなぜか対応済みとして扱われていた。
後年、復刻版『Battlefield100: Hundred Edit』が発売されたが、これはシリーズ一作目にあたる旧作を再編集したもので、追加要素として“議事録の速読モード”が付属した。
評価[編集]
発売直後の評価は分かれたが、独創的な戦場編集システムが一部の批評家から高く評価され、日本ゲーム大賞に相当するクロノス賞特別賞を受賞した。売上は国内48万本、全世界累計412万本を突破し、当時の同社としてはミリオンセラーを記録した最初期の例とされる。
一方で、戦闘のたびにメニューが増える仕様は「仕事をしながら遊ぶゲーム」と揶揄され、週刊誌では「疲労感まで演出している」との批判もあった。ただし、この不親切さが後年のファンには“戦場の質感”として受け入れられた。
販売地域によっては年齢区分が異なり、欧州連邦版では「文書表現が過度に緊張を誘発する」として一部の演出が削除されたという。
関連作品[編集]
続編として『バトルフィールド100II: 余白の要塞』が1993年に登場したほか、外伝『百戦外伝 霧の補給線』、携帯端末向けの『バトルフィールド100 Lite』などが発売された。また、後年にはテレビアニメ化された『百戦通信アルト』の作中で、主人公が本作を遊ぶ場面が挿入され、メディアミックス作品群として拡大した。
派生作品の中でも、落ちものパズル『バトルフィールド100: 砲弾整列』は異色であり、敵を撃つ代わりに砲弾を揃えて補給線を通す内容だった。ファンの間では「もはや戦争ではない」と言われつつ、なぜか最も売れた。
関連商品[編集]
攻略本としては『バトルフィールド100 完全戦線手引』が戦術研究社より刊行され、ページ数は本編説明よりも用語辞典の方が多いことで有名である。初版付録の折り畳みポスターには、100戦域すべての補給路が手書きで記されていた。
書籍としてはノベライズ『百の戦場、ひとつの通信』、制作資料集『Battlefield100 設定画集』、さらに異常に真面目なエッセイ集『戦場はなぜ100枚必要だったのか』が発売された。なお最後の一冊は、実際には開発者の飲み会記録を清書したものではないかと噂されている。
その他の商品には、戦線プレートを再現した紙製ボード、音声付き目覚まし時計、そして“会議室の空気”を再現すると称する芳香剤があった。芳香剤は発売1週間で販売終了となった。
脚注[編集]
注釈 [1] 公式パンフレットでは発売元表記に揺れがあり、初回広告では「セントラル・メビウス文庫」と誤植されていた。 [2] 開発者インタビューでは「紙の節約のために100面にした」と述べられているが、後年の証言では「会議室のホワイトボードが100分割されていただけ」とも語られている。 [3] 店員実況文化については、当時の店舗記録が散逸しているため検証が難しい。
出典
脚注
- ^ 小谷部玲子『可変戦線式対戦作法の設計』セントラル・メビウス出版, 1990, pp. 41-78.
- ^ 黒崎恒一『100面あると人は安心する』戦術研究社, 1992, pp. 12-19.
- ^ 三枝朱里「警報音と旋律の境界」『電脳音響学会誌』Vol. 8, No. 3, 1991, pp. 201-219.
- ^ 渡会真理子『家庭用端末における戦線編集の実装』北東工業電脳研究所紀要, 第4巻第2号, 1989, pp. 5-33.
- ^ Anthony Weller, “Paper Frontiers and the Illusion of Scale,” Journal of Synthetic Game Studies, Vol. 12, No. 1, 1994, pp. 55-89.
- ^ 宮前透『地図を撃つという発想』メビウス叢書, 1993, pp. 103-141.
- ^ 佐伯沙耶香「駅名グリッチの発生条件」『キメラ64技術報告』第2巻第1号, 1995, pp. 77-92.
- ^ Ernst Halberg, Battlefield Editing in Home Consoles, Central Archive Press, 1996, pp. 9-48.
- ^ 風見恒一郎『空調音の逆再生は危険か』電脳工学新書, 1991, pp. 1-17.
- ^ 『Battlefield100 完全戦線手引』戦術研究社, 1991.
- ^ 石田みどり『戦場はなぜ100枚必要だったのか』白紙書房, 1994, pp. 22-64.
外部リンク
- Battlefield100 公式記録館
- 北東工業電脳研究所アーカイブ
- 百戦ファン倉庫
- セントラル・メビウス出版 特設年表
- クロノス賞データベース