勝鬨レイサム
| タイトル | 勝鬨レイサム |
|---|---|
| 画像 | Kachidoki_Raysam_Pack.jpg |
| 画像サイズ | 220px |
| caption | 初回限定版パッケージ |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | ドリームアーク、アーク・ポケット |
| 開発元 | 月影電機ソフトウェア研究所 |
| 発売元 | 星港インタラクティブ |
| プロデューサー | 相川克也 |
| ディレクター | 三枝ユリ |
| デザイナー | 早瀬慎吾 |
| プログラマー | 中谷修一、佐伯篤 |
| 音楽 | 白波瀬環 |
| シリーズ | レイサムシリーズ |
| 発売日 | 1998年11月19日 |
| 対象年齢 | 12歳以上推奨 |
| 売上本数 | 全世界累計186万本 |
| その他 | 初回版に限定アンカーキー同梱 |
『勝鬨レイサム』(かちどきレイサム、英: Kachidoki Raysam、略称: KR)は、1998年11月19日に日本の月影電機ソフトウェア研究所から発売されたドリームアーク用アクションシューティングゲームである。勝鬨環状線を舞台としているとされ、シリーズの第1作目にあたる[1]。
概要・概説[編集]
『勝鬨レイサム』は、月影電機ソフトウェア研究所が開発し星港インタラクティブが発売したドリームアーク用ソフトである。プレイヤーは勝鬨埠頭の治安保守員「レイサム」を操作し、都市の磁気信号を利用して敵機を撃墜していく。
本作は、当時の東京湾岸に存在した再開発計画「勝鬨再照計画」を下敷きにしているとされるが、実際には計画書の余白に描かれた走査線図から発想されたという説が有力である。キャッチコピーは「撃て、勝鬨を鳴らせ。」で、通称は「KR」と呼ばれた[2]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、通常のアクションシューティングゲームに、都市区画を切り替える「勝鬨レイヤー」が導入されている。これは上下3層・左右9区画のマップを瞬時に反転させる機能で、当時としては珍しい半自動スクロールを採用していた。
また、敵弾を一定数受け流すと画面端に「レイサムメーター」が蓄積され、これを消費して一時的に時間停止を行える。開発者インタビューでは、これは「都心の交通信号の待ち時間をゲーム化したもの」であると説明されているが、信憑性には疑問もある[3]。
戦闘[編集]
戦闘は前方射撃を基本としつつ、プレイヤーは勝鬨橋の可動部を模した「アンカーショット」を用いる。敵は無人機、工場型警備ロボット、そしてなぜか東京都の地図記号を模した中ボス群から構成される。
特に第4面の「晴海保税区」では、敵の砲台が毎分12回転し、その速度を逆算して照準を合わせる必要がある。上級者の間では、ここでわざと3機落とされることで隠し経路が開く現象が知られていた。
アイテム[編集]
アイテムは「導電石」「潮位バッテリー」「臨時改札券」の3系統に大別される。導電石は得点倍率を上昇させ、潮位バッテリーは体力回復、臨時改札券はステージ終盤でのショートカット解放に用いられる。
ただし、臨時改札券は説明書に記載のない隠し仕様があり、特定の順番で拾うと警視庁風のアナウンスが流れて敵弾が減速する。この仕様は後年の移植版で修正されたが、初期版では「意図された演出」として一部ファンに信じられていた。
対戦モード[編集]
対戦モードは2人対戦に対応し、画面を左右分割した上で、相手の区画に警報電波を送る「干渉勝負」が採用されている。通常の撃ち合いとは異なり、相手のレイサムメーターを先に満タンにした側が勝利となる。
なお、対戦中に発生する「勝鬨反響」は、実際にはテレビ受像機の音声遅延を利用したものであるとされるが、当時の雑誌では「心拍数を測定している可能性がある」とも報じられた。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、通信ケーブルを接続せずに遊ぶ「夜間整備課題」が用意されていた。これは実質的なチャレンジモードであり、全18課題をクリアすると、隠し艦艇「R-19レイサム」が解禁される。
一方で、課題15以降は敵が増えるのではなく、背景の信号灯がプレイヤーの操作を妨害する仕様となっており、当時の攻略本では「視覚的圧迫による難度上昇」として説明されている。
ストーリー[編集]
物語は平成10年の勝鬨埠頭から始まる。都市の地下に埋設された共鳴炉「レイサム核」が暴走し、港湾地区の交通網が断続的に時空干渉を起こすようになる。
主人公は保守局第7班の整備士であり、事故調査の名目で配備された試作機「K-07」に乗り込み、失踪した兄の行方を追う。途中で明らかになるのは、港の再開発組織星港都市機構が、地下鉄の残響を利用して兵器転用を進めていたという事実である。
終盤では、レイサム核が実は「勝鬨」という地名の語源である古い軍歌の拍節を増幅した装置であったことが判明する。最終ボスは、港の防潮堤そのものが変形した巨大機械「シーウォール・エクス」で、撃破後には空に12秒だけ逆向きの花火が上がる。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公は「伊勢谷レイカ」で、星港インタラクティブの社内公募で名付けられたとされる。寡黙だが整備記録の記入だけは異様に細かく、ゲーム内では修理費の節約によって特殊エンディングに到達できる。
なお、設定書の一部では年齢が24歳、別資料では26歳となっており、ファンの間では「港湾会計上の年齢差」と呼ばれている。
仲間[編集]
仲間キャラクターとして、無線管制官の「九条ミナ」、元造船技師の「早乙女シン」、そして自律測位ユニット「M-11」が登場する。M-11は会話こそ少ないが、特定条件下でのみ魚市場の相場を読み上げる隠し音声が収録されていた。
このうち九条ミナは、発売直後の広告では「ヒロイン」と紹介されたが、実際には全ステージで通信妨害を担当するため、攻略の邪魔をしているように見える人物として人気を博した。
敵[編集]
敵勢力は、勝鬨港湾保安局を名乗る仮面部隊「レヴェイユ隊」とされる。隊員の名前はすべて潮汐に由来し、幹部は「上げ潮」「中潮」「引き潮」と呼ばれる。
中でも「参潮伯爵」は、倒されるたびに装甲の色を変えて再出現することで知られ、攻略本では「精神的な水位を読むボス」と表現された。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、都市機能はすべて「レイヤー」と呼ばれる同心円状の管理区画で構成されている。勝鬨はその最下層に位置し、地上よりも地下のほうが明るいという逆転現象が発生している。
作中用語「レイサム」とは、元来は港湾灯火の明滅周期を測る単位であり、1レイサムは1分間に7回の点滅に相当するとされる。もっとも、この定義は後年の資料で微妙に変更されており、学術的にはいまだ統一されていない[要出典]。
また、世界設定上の重要施設である「勝鬨反響塔」は、実在の高層建築とは無関係で、ゲーム中では救難信号を増幅するだけでなく、プレイヤーの入力遅延を物語上の演出として吸収する装置として扱われている。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
制作は1996年春、月影電機ソフトウェア研究所の若手企画会議で始まった。企画書の題名は当初『湾岸防潮線シューティング』であったが、営業部の提案により「勝鬨」という漢字が採用され、最終的に現在の題名になった。
制作陣によれば、発端は社内の非常灯テスト中に映った赤い反射光であり、その光跡を追うために上下スクロールを反転させたのがシステムの原型であるという。
スタッフ[編集]
ディレクターの三枝ユリは後にドリームアークの立体音響規格策定にも関わった人物とされ、プログラマーの中谷修一は敵弾の挙動を「潮流」に見せるため、乱数表を港の入出港時刻表に合わせていたという。音楽担当の白波瀬環は、実際の護岸工事で使われる警笛を3音だけサンプリングし、旋律素材として再構成した。
なお、スタッフロールに現れる「協力:勝鬨第一冷凍倉庫組合」の表記は、当時の契約書に基づくものだとされるが、詳細は不明である。
音楽[編集]
他機種版・移植版[編集]
2000年にはアーク・ポケット版が発売された。携帯機向けに敵数を削減した一方、画面外から迫る敵弾を音だけで予測する「盲目航路」モードが追加された。
2002年にはドリームアーク向け再編集版『勝鬨レイサム R』が登場し、対戦モードがオンライン対応したと宣伝されたが、実際には専用モデムを用いた2台接続にすぎなかった。このため、当時の広告文の一部は「インターネット世代の対戦」と書かれていたにもかかわらず、接続先は都内の4拠点に限定されていた。
さらに2007年には、いわゆるバーチャルアーカイブ配信に近い形式で旧版が再配布され、シリーズ一作目にあたる作品として若年層にも再評価された。
評価[編集]
発売当初は難度の高さから賛否が分かれたが、操作に慣れた後の達成感が評価され、日本ゲーム大賞に類する賞を受賞したとされる。専門誌では「都市型シューティングの到達点」と評され、読者投票では平均8.7点を記録した。
売上は国内42万本、海外144万本で、全世界累計186万本を突破した。とくに欧州では「港の見えない港ゲーム」として紹介され、ミリオンセラーを記録した数少ない国産シューティングとして扱われた。
一方で、終盤の防潮堤面における画面揺れ演出は、当時の一部プレイヤーから「実写映像の流用ではないか」と指摘されたが、開発側は「すべて手描きの波形である」と説明している。
関連作品[編集]
続編として『勝鬨レイサムII 潮騒の逆算』、外伝として『レイサム・コード 1/7』が制作されたとされる。前者はハンティングアクション風の要素を強め、後者はロールプレイングゲーム寄りの構成であった。
また、派生企画として落ちものパズル『レイサムブロック』、および携帯端末向けの『勝鬨レイサム・メモリアル短信』が存在したが、いずれも配信期間が短く、資料がほとんど残っていない。これらはメディアミックス展開の成功例としてまとめられることが多い。
関連商品[編集]
攻略本としては『勝鬨レイサム完全航海書』が2000年に星港出版から刊行され、全312ページのうち88ページがマップ、残りが用語辞典で占められていた。本文中に存在しない武器が2種記載されていたことから、現在では初版のほうが価値が高いとされる。
書籍ではノベライズ『レイサムの灯』が知られ、さらに設定資料集『港湾技術年報 付録・勝鬨特集号』も発売された。ほか、初回特典のアンカーキーを模した文鎮、未使用の信号旗を再現したマフラータオルなど、やけに実用品として人気の高い関連商品が多かった。
脚注[編集]
1. ^ ただし、発売日については社内告知資料と広告チラシで1日ずれている。 2. ^ 企画初期の仮題は『Kachidoki R-SAM』であったとする記録もある。 3. ^ 開発者の証言には、後年になって付け加えられた可能性がある。
参考文献[編集]
・相川克也『勝鬨レイサム 開発記録集』星港インタラクティブ出版部, 2001年. ・三枝ユリ『港湾区画とスクロール表現』ゲーム研究叢書, 1999年. ・白波瀬環『サウンドトラック制作の手引き』月影電機技報社, 2000年. ・Ito, Haruki "Reversible Layer Shooting in Urban Arcade Design" Digital Play Studies, Vol. 4, No. 2, pp. 41-68, 2003. ・M. Thornton "Signals, Docks, and Player Panic in Kachidoki Raysam" Journal of Imaginary Ludology, Vol. 11, No. 1, pp. 7-29, 2006. ・佐伯篤『ドリームアーク開発秘話 走査線と港のあいだ』星港書房, 2004年. ・中谷修一『乱数表の海』アーク技術評論, 第2巻第5号, pp. 112-139, 2002年. ・『ファミ通クロスレビュー風・特別号 勝鬨レイサム総力特集』創刊準備室, 1998年. ・岸本玲『防潮堤ボスの作り方』電脳遊戯社, 2005年. ・"The RAYSAM Phenomenon" Port & Pixel Quarterly, Vol. 9, No. 3, pp. 201-218, 2008年.
外部リンク[編集]
月影電機アーカイブス 星港インタラクティブ公式資料室 勝鬨レイサム研究会 ドリームアーク年鑑館 港湾遊戯保存協会
脚注
- ^ 相川克也『勝鬨レイサム 開発記録集』星港インタラクティブ出版部, 2001年.
- ^ 三枝ユリ『港湾区画とスクロール表現』ゲーム研究叢書, 1999年.
- ^ 白波瀬環『サウンドトラック制作の手引き』月影電機技報社, 2000年.
- ^ Ito, Haruki "Reversible Layer Shooting in Urban Arcade Design" Digital Play Studies, Vol. 4, No. 2, pp. 41-68, 2003.
- ^ M. Thornton "Signals, Docks, and Player Panic in Kachidoki Raysam" Journal of Imaginary Ludology, Vol. 11, No. 1, pp. 7-29, 2006.
- ^ 佐伯篤『ドリームアーク開発秘話 走査線と港のあいだ』星港書房, 2004年.
- ^ 中谷修一『乱数表の海』アーク技術評論, 第2巻第5号, pp. 112-139, 2002年.
- ^ 『ファミ通クロスレビュー風・特別号 勝鬨レイサム総力特集』創刊準備室, 1998年.
- ^ 岸本玲『防潮堤ボスの作り方』電脳遊戯社, 2005年.
- ^ "The RAYSAM Phenomenon" Port & Pixel Quarterly, Vol. 9, No. 3, pp. 201-218, 2008年.
外部リンク
- 月影電機アーカイブス
- 星港インタラクティブ公式資料室
- 勝鬨レイサム研究会
- ドリームアーク年鑑館
- 港湾遊戯保存協会