ショー!チック!バイ!
| 作品名 | ショー!チック!バイ! |
|---|---|
| 原題 | Show! Tick! Bye! |
| 画像 | 架空ポスター(主人公の手が震えながら拍手をする構図) |
| 監督 | 渡海シオン |
| 脚本 | 渡海シオン、柊原リツ |
| 原作 | 柊原リツ「拍手の周期」 |
| 制作会社 | ポラリス映像 |
| 配給 | 江戸川フィルム配給 |
| 公開 | 1996年8月17日 |
| 上映時間 | 92分 |
『ショー!チック!バイ!』(しょー ちっく ばい)は、[[1996年の映画|1996年8月17日]]に公開された[[ポラリス映像]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]である。原作・脚本・監督は[[渡海シオン]]。興行収入は12億4800万円で[1]、[[日本アニメ大賞]]最優秀作品賞を受賞した[2]。
概要[編集]
『ショー!チック!バイ!』(しょー ちっく ばい)は、[[1996年8月17日]]に公開された[[ポラリス映像]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]である。原作・脚本・監督は[[渡海シオン]]。チック症を抱える主人公が偶然の機会に[[ショービジネス]]へ入り、「止める」のではなく「使う」ことで舞台を作っていく感動物語として知られる。
本作は、当時急増していた地域の小劇場活性化事業と偶然の折り合いを見せ、公開初週の動員は全国で合計89,214人を記録したとされる[3]。一方で、作中の「本人が舞台でチックを“合図”に変える」描写が、医療関係者からは単純化だとの指摘も受けた[4]。
あらすじ[編集]
物語は、[[千葉県]][[船橋市]]の古い商店街を舞台に進む。主人公の少年・[[杉浦ケンジ]]は、喉の奥で音が跳ねるようなチックと、視線が一瞬だけねじれる癖に悩んでいた。彼は自分の身体を「壊れる装置」として恐れ、学校の体育祭ですら出番を拒んだ。
ある日、商店街の抽選会で当たったのが、失敗した大道芸一座のリハビル用チケットだった。彼は控室で見た奇妙なマニュアル「Tickを数えると幕が開く」を偶然めくり、そこに書かれた“3拍+息継ぎ”という暗号めいた手順を、なぜか自分の症状と一致させてしまう。その瞬間、チックは不規則なノイズから、リズムの一部へと変わったように感じられた。
杉浦は一座の看板娘・[[真木ミナ]]の指導で、客に向けて「遅れ」を“演出の間”として提示する稽古を始める。公演は成功と失敗を繰り返し、観客の拍手が増えるたびに、彼のチックはより細かく制御できたように見える。ただし、クライマックスで彼が無理に“完璧な周期”を守ろうとしたとき、身体は逆に暴れてしまう。そこで彼は、止めるよりも「今日の自分で舞台を終える」選択をし、客席の沈黙の後に大きな笑いが起こる。
終盤、杉浦は商店街の子ども向けに短いショーを開き、最後の合図として「ショー!チック!バイ!」の掛け声を自ら言い切る。彼は“治す”のではなく、“生きる速度”を選び直したとされる。映像は、駅前の踏切が鳴る時間まで数えたかのような精密さで締められる。
登場人物[編集]
主要人物として、チック症に悩む少年[[杉浦ケンジ]]、大道芸一座を束ねる看板娘[[真木ミナ]]、稽古の設計に異様なこだわりを持つ元音響技師[[藤ノ原サブロウ]]が中心となる。その他として、商店街の世話役[[小松アキラ]]、杉浦の担任[[相沢ユリ]]、競技志向の体育教師[[牧田シゲル]]が対比として配置される。
物語上、チックの描写は医療の症例説明ではなく、舞台演出の構文として反復される。編集段階では、音の“破裂点”を何度目のセル画で修正するかが議論になり、結果として一部のカットではわずかな破綻があえて残されたとされる[5]。
声の出演またはキャスト[編集]
キャストは、ケンジ役を[[内海トモ]]、ミナ役を[[橘ノア]]、藤ノ原サブロウ役を[[神楽坂リュウジ]]が担当した。さらに[[村瀬エリカ]]が相沢ユリ、[[高梨ケイ]]が牧田シゲル、[[橋場カズオ]]が小松アキラに配されたとされる。
音響演技の方針として、チック由来の音は“声優の無意識な癖”ではなく、台本に記された呼気の長さ(例:0.42秒、0.27秒)で設計されたとされる。なお、劇場用音声では低域を抑える設定が取られ、[[DVD色調問題]]により家庭用ソフトで口元の色味が変わって見えるカットがあると報告された[6]。
スタッフ[編集]
スタッフ面では、監督の[[渡海シオン]]が原作・脚本も兼任し、演出を一本のリズム理論へ収束させたとされる。脚本には[[柊原リツ]]が参加し、舞台用の台詞回しが“観客の笑いを測る”調整として書き込まれた。
作画では[[ポラリス映像]]の[[第3動画課]]が中心を担い、舞台シーンだけ線幅を0.5段階変える仕様が採用されたとされる。また、特殊技術として、チックの瞬間に輪郭が歪む表現に[[セル画]]と[[デジタル彩色]]のハイブリッドが用いられた。
音楽は[[早瀬ミツキ]]が担当し、主題歌は[[『バイバイ・パルス』]](歌:[[佐伯カレン]])である。主題歌は“最後に言い切る声”を合図として録音し、サビの終わりで敢えて息が漏れるよう加工されたとされる[7]。
製作[編集]
企画は、[[渡海シオン]]が[[船橋市]]の小劇場を取材した際に、障害者向け公演で子どもたちが笑いながら拍手を揃えていた光景から生まれたとされる。当初のタイトル案は『Tickを愛せ』だったが、語感の強さから現行表記に変更されたという。
制作過程では、チックを“症状”として説明するのではなく、“観客の反応”と同期させる方針が取られた。たとえば、主人公が袖に手を伸ばしてから口上に至るまでの平均時間を0.86秒に揃えるなど、テンポ設計が細かく管理されたとされる[10]。一方で、完成版ではその数字がわずかに乱れるカットが残され、ここが後に「狂気の伏線」と呼ばれた。
美術・CG・彩色では、踏切の音に合わせた字幕の速度調整が行われた。字幕は通常24fpsのままではなく、踏切シーンのみ23fps換算で表示されているとする資料がある。ただしこれは後年の編集資料で「実装されていない」とも訂正されており、要出典の状態のまま語り継がれている[4]。
着想の源として、音響技師[[藤ノ原サブロウ]]のセリフ「人の体は楽器ではなく、楽器の方が人に似る」は、当時の舞台音響講習会で流行った反転フレーズを脚色したものだとされる。結果として本作は、医療と娯楽の境界を“拍手”で横断する作品として整理された。
興行[編集]
宣伝は「あなたの拍手は何拍ですか?」をキャッチコピーに掲げ、劇場入口で簡易拍手カウンターを配布した。カウンターは理屈上のはずだったが、実際には音の大きさで誤差が出るため、観客の方が“拍手の癖”を笑いながら学習してしまったと報じられた[12]。
封切りは[[1996年8月17日]]で、同日公開の別作品と競合したにもかかわらず、初週末の全国興収は2億6300万円を記録したとされる。なお、これは当時の映画館データを“チケットの半券番号順”で再計算したという社内資料に基づくため、信頼性については議論が残っている[6]。
テレビ放送では1997年のゴールデンウィークに放送され、視聴率は15.8%を記録したとされる。リバイバル上映として、2011年に“街の拍手の日”と連動した上映会が行われ、チックの描写に関する座談会付き上映が実施された。
海外では、[[フランス放送公社]]の子ども向け枠で「Tick Bye(ティック・バイ)」として紹介され、字幕で「ショー!チック!バイ!」の音の段差を再現するため、わざと不自然な擬音語が採用されたという。
反響[編集]
批評家の評価は概ね好意的で、「娯楽映画として、個体差を演出の文法に変換した」点が評価された。[[日本アニメ大賞]]では最優秀作品賞に加え、音響設計賞のノミネートも獲得したとされる。
一方で批判と論争も存在した。医療者からは、チックを“可愛く”見せることで本人の苦痛が軽んじられるのではないかという懸念が示された[4]。また、主人公が“無理に周期へ合わせる”場面が倫理的に不適切だとする意見もあり、制作側は「演出であり治療ではない」との声明を短く出した。
受賞・ノミネートとしては、音楽賞、脚本賞、作画設計賞の計3部門でのノミネート記録があるとされる。ただし、複数の賞データベースでは年が1年ずれるものもあり、編集作業での整合性が問題視された[1]。
テレビ放送[編集]
テレビ放送は前述の通り1997年ゴールデンウィークに実施され、視聴者の反応として「チックの音がBGMと混ざると不思議に安心する」という投書が増えたとされた[12]。制作側は、音響ミックスの家庭用差異(低域の再現性)を踏まえて、放送版の音声を再調整した。
また、放送局側の要請で、商店街の踏切シーンが少し短縮されている。これは児童視聴枠での安全配慮とされるが、短縮幅が“字幕の残り文字数で決まった”という編集者談も残っており、要出典として引用されることがある[5]。
再放送では学校単位の視聴が増え、[[相沢ユリ]]が机に置くメモ(“3拍+息継ぎ”)がそのままプリント配布に転用された。結果として、地域の演劇サークルでは独自に「呼気カウント式ウォームアップ」が広がったとされる。
関連商品[編集]
関連商品として、DVDとLDがそれぞれ“音声同期版”として発売された。特典映像には「拍手カウンターの使い方」「主人公のチックが演出に変わるまで」というメイキングが収録されたとされる。
また、コミカライズとして[[柊原リツ]]の同名漫画『ショー!チック!バイ!』が連載された。紙幅の都合で、チックの周期図が4ページに圧縮されており、読者には“意外と医学っぽい図”として受け止められたという。
さらに、学校教材向けに短編アニメ『3拍の約束』が派生し、商店街でのイベント用台本も配布された。ここでも「止めないための台詞」が教材化されたと報じられている[9]。
脚注[編集]
脚注
- ^ 渡海シオン「『ショー!チック!バイ!』制作ノートと“3拍”の設計」『アニメーション研究叢書』Vol.12 第3号, pp.41-67, 1997.
- ^ 柊原リツ「拍手の周期:舞台演出としての身体表現」『演出言語学ジャーナル』第5巻第1号, pp.12-29, 1996.
- ^ 江戸川フィルム配給『1996年夏季配給成績報告(内部資料)』pp.3-18, 1996.
- ^ 相沢ユリ(寄稿)「チック表象と受容:娯楽作品の倫理点」『小児精神と表象』Vol.9 No.2, pp.101-119, 1998.
- ^ 藤ノ原サブロウ「音響から見た沈黙の長さ」『劇場音響技術年報』第14巻, pp.77-95, 1997.
- ^ 内海トモ「声の“呼気設計”について」『声優演技研究』第2巻第4号, pp.55-63, 1999.
- ^ 早瀬ミツキ「主題歌における息の処理:バイバイ・パルスの編集思想」『作曲実務レビュー』Vol.7 pp.201-228, 1997.
- ^ 橘ノア「観客の笑いは測定できるか」『舞台芸術批評』第11号, pp.33-48, 1998.
- ^ 『日本アニメ大賞 受賞記録集 1996-2000』日本映像文化財団, 2001.
- ^ “Home media color mismatch and fan workarounds”『Journal of Media Restoration』Vol.3 No.1, pp.9-21, 2012.
外部リンク
- ポラリス映像 公式アーカイブ
- 江戸川フィルム配給 上映記録室
- 日本アニメ大賞 データベース
- 拍手カウンター コレクション
- 3拍の約束 教材サイト