タイムスリップ・お市 第二期 ビザンティン帝国編
| タイトル | タイムスリップ・お市 第二期 ビザンティン帝国編 |
|---|---|
| ジャンル | 歴史転移漫画、時代劇、宮廷陰謀、SF風味 |
| 作者 | 久世巴 |
| 出版社 | 白銀出版 |
| 掲載誌 | 月刊フォリオ・ノヴァ |
| レーベル | フォリオ・コミックス |
| 連載期間 | 2014年4月号 - 2019年11月号 |
| 巻数 | 全11巻 |
| 話数 | 全62話 |
| 累計発行部数 | 480万部 |
『タイムスリップ・お市 第二期 ビザンティン帝国編』(たいむすりっぷ・おいち だいにき びざんてぃんていこくへん)は、による日本の漫画。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『タイムスリップ・お市 第二期 ビザンティン帝国編』は、戦国期のがへ転移し、の宮廷で権力闘争に巻き込まれるという設定の歴史転移漫画である。前作『第一期 織田家離脱編』の予想外の売れ行きを受け、編集部が「海外史編」を半ば増刊企画として立ち上げたことが発端とされる。
作品は、異文化衝突の緊張感と、妙に正確な中世宮廷礼儀の描写で知られる一方、週ごとに朝の年表が1年ずつ進むなど、連載誌上でやけに学術的な重みを持っていた。読者アンケートでは「勉強になるのに勢いで押し切られる」と評され、最盛期には単行本第7巻発売時点で累計発行部数310万部を突破したとされる[2]。
制作背景[編集]
作者のは、もともと京都の郷土資料館で古文書整理のアルバイトをしていた人物で、そこで偶然見つけた「女武者が海を渡りローマに入る」という未詳写本に強く影響を受けたとされる。なお、当該写本はのちに白銀出版の社内倉庫からも複製が発見されたが、用紙の透かしから2008年製であることが判明しており、学術的には話が少しややこしい。
企画初期は『お市、海を渡る』という比較的素直な案だったが、編集会議で「第二期は国際感を出したい」という意見が通り、編が追加された。担当編集のは、史実考証班に東京外国語大学出身の研究助手3名を投入し、の看板文言だけで42ページ分の注釈を付けたという。これにより作品は「漫画なのに欄外が本体」と呼ばれるようになった。
また、作中に登場するは、作者が「巻物を背負うと絵が映える」という理由で採用したものであるが、実際には連載第3話の時点で読者人気投票1位の小道具となった。のちに白銀出版はこの筒を模した文具セットを商品化し、初回生産1万8,000個がわずか6日で完売したとされる[3]。
あらすじ[編集]
転移・皇都侵入編[編集]
のある夜、は戦火から逃れるために潜んだ寺の蔵で奇妙な金貨を手にし、そのままのへと転移する。到着直後、彼女は付近で宮廷護衛隊に拘束されるが、持ち前の度胸と礼法の機転で、皇妃付きの通訳役として城内に入ることになる。
この編では、の修復工事をめぐる職人たちの争いと、皇帝の「都市をさらに巨大化させる」という執念が描かれる。特に第8話「石灰と鏡の夜」では、お市が石工たちに日本式の縄張り術を教え、翌週には城壁の補強がなぜか12%だけ早く終わるという怪しい成果が出た。
宮廷陰謀・聖像論争編[編集]
の侍女団に取り立てられたお市は、宮廷の派閥抗争に巻き込まれる。ここで彼女は、を推す宗務官と、香の煙を「神学的に有効な視覚媒介」と主張する修道士たちの板挟みになる。
連載中盤の山場とされる第19話では、お市がで行われる演説競技に参加し、敵対派閥の告発文を即興で読ませることで場を収める。しかし、その原稿が実はとを混ぜた半端な文体だったため、議会は内容を理解しないまま拍手に包まれた。この回は、のちに「意味不明なのに最も説得力がある回」としてファンの間で伝説化した。
海戦・皇統護持編[編集]
後半では、の来襲に対し、お市が火薬ではなく「甘い酒粕を煮詰めた粘液」で船底を封じるという、どう見ても理屈が通っていない防衛策を提案する。これが宮廷技術局で採用され、結果として敵船の帆布がべたついて撤退した、という記録が残るが、要出典との指摘もある。
終盤では、皇子の後継問題が激化し、お市は「誰が帝位につくか」ではなく「誰が最も国庫の帳簿を読めるか」を基準に選ぶべきだと進言する。最終話では、彼女が転移前の時代へ戻るかと思われたが、実際にはの修道院で「第二期続く」と書かれた釈文を残し、第三期への露骨な引きとして幕を閉じた。
登場人物[編集]
は本作の主人公であり、戦国の礼法と異国宮廷の作法を混同しながらも、なぜか常に最適解を引き当てる人物として描かれる。作中では、涙ながらに政治を語る一方で、刀の手入れと会計帳簿の照合だけは異様に速い。
は、皇帝付きの文書官である。最初はお市を異邦の厄介者と見ていたが、彼女の「判読不能な仮名混じりの覚え書き」が暗号解読に役立ったことで、以後は右腕的存在となった。
は、作品内で最も強い発言力を持つ人物の一人であり、実質的に宮廷の空気を支配している。派手な衣装と冷徹な政治判断で人気が高く、読者投票では3回連続で「一番怖いのに好きな人物」1位を獲得した。
は、の神学を体現する人物として配置されているが、実際には園芸と養蜂に詳しいだけで、毎回なぜか戦争を止める。彼女の蜂蜜は「帝都の実効支配より強い」とまで評された。
用語・世界観[編集]
作中のとは、歴史の重要局面にだけ発生する局地的な時間歪曲現象を指す。これは久世巴の独自設定であり、作中では金貨・鐘・燭台の3要素が揃うと発生率が上がるとされるが、理屈は最後まで説明されない。
は、帝国財務省に保管される極秘文書で、収支だけでなく人事・婚姻・宗教儀礼の順序まで記録されている。お市がこれを読めることが、単なる異文化適応ではなく「行政的に帝国へ順応した証」とされ、読者の間ではむしろ恐怖の対象となった。
また、は敵艦を止めるために考案された架空の防衛資材で、海水に触れると糖分が増幅されるという、物理的にはかなり無理のある性質を持つ。作中では、第41話でこれを大量投下した結果、海峡一帯にカラスが3日間居座ったとされている。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、全11巻が発行された。第1巻から第4巻までは歴史導入と人物整理を重視した構成であるが、第5巻以降は欄外資料が急増し、1巻あたりの本文と注釈の比率がほぼ1対1になった。
特装版には、の城壁を再現した紙製ブックカバーと、作者直筆の「帝都見取り図」が付属した。この見取り図は実際の地図と10か所以上のズレがあるが、ファンの間では「久世版歴史観」としてむしろ尊重されている。
なお、第8巻の帯には「累計発行部数380万部突破」と記載されたが、のちに第7巻重版分を含めた誇張表記だったことが判明した。もっとも、白銀出版は「出版社としては概ね正しい」とコメントしており、事態はやや曖昧なまま収束した。
メディア展開[編集]
2018年には化され、帝都の雑踏音に実在の市場録音を混ぜたことで話題となった。続いて2019年には深夜帯でが発表され、全24話構成で放送されたとされる。アニメ版では、ヒッポドロームの群衆作画に予算の大半が投じられ、1話あたり平均1,200枚の原画が使用されたという。
さらに、舞台版『タイムスリップ・お市 外伝 紫の門の午後』も制作され、京都と大阪の間にあるという設定の架空都市で上演された。客席参加型の「簿記合戦」シーンが評判を呼び、初演のチケットは先行分8,400枚が即日完売した。
また、白銀出版はスマートフォン向けの歴史探索ゲーム『お市と三つの帝冠』を配信したが、肝心のゲーム内容よりも付属する式通知音が人気を博し、各種配信サイトで着信音ランキング1位を記録した。
反響・評価[編集]
本作は、歴史漫画としての密度と、意味不明なほど真剣なギャグの両立により、連載当時から熱心な読者層を形成した。特にやの一部で「貸出回転率が異常に高い漫画」として知られ、実際に第6巻は学術書棚から3回も紛失しかけたという。
批評家の間では、と女性主人公の主体性を描いた点が高く評価された一方、時蝕のルールが場面ごとに微妙に変化することについては賛否が分かれた。なお、ファンコミュニティでは「お市が何をしても帝国が少しだけ良い方向に進む」という現象を『お市補正』と呼び、経済・恋愛・戦争のすべてに適用して楽しむ文化が生まれた。
一部では「実在史の理解を著しく歪める」との批判もあったが、久世巴はインタビューで「歪んでいるのは歴史ではなく、だいたい編集部の締切である」と答えたとされる。この発言はSNS上で広く引用され、作品の象徴的な一節になった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 久保田真理『中世帝都と女性像の再構成』白銀史学出版, 2017, pp. 88-104.
- ^ Eleanor M. Vance, "Chronicles of Imperial Drift in Modern Manga", Journal of East Mediterranean Popular Culture, Vol. 12, No. 3, 2019, pp. 41-67.
- ^ 石垣玲央『月刊フォリオ・ノヴァ編集録 2013-2019』白銀出版, 2020, pp. 201-219.
- ^ 松原慎一『図像としてのコンスタンティノープル』港北文庫, 2016, pp. 55-72.
- ^ A. N. Petrov, "The Purple Ledger and Its Narrative Economy", Byzantine Studies Quarterly, Vol. 18, No. 1, 2020, pp. 5-29.
- ^ 高瀬ゆかり『歴史漫画における時空歪曲表現の研究』白銀大学出版会, 2018, pp. 13-46.
- ^ Marcos Ilyas, "From Siegecraft to Sweets: Sticky Materials in Fictional Siege Narratives", Vol. 7, No. 4, 2021, pp. 77-95.
- ^ 久世巴『作者ノート 紫の門の午後』白銀出版, 2019, pp. 3-17.
- ^ 西園寺亜希『アヤソフィアの屋根はなぜ走るのか』都築書房, 2015, pp. 141-158.
- ^ H. J. Belling, "A Very Serious Comic About Very Strange Taxation", Manga & Empire Review, Vol. 9, No. 2, 2022, pp. 101-123.
外部リンク
- 白銀出版作品案内
- 月刊フォリオ・ノヴァ特設サイト
- 久世巴アーカイブ
- 帝都歴史漫画資料館
- お市補正ファン研究会