超越七光り英雄ムカデマン
| タイトル | 超越七光り英雄ムカデマン |
|---|---|
| ジャンル | 変身ヒーロー漫画、群像劇、風刺SF |
| 作者 | 霧島譲二 |
| 出版社 | 銀河出版 |
| 掲載誌 | 月刊ネビュラジャンプ |
| レーベル | ネビュラ・コミックス |
| 連載期間 | 1997年4月 - 2005年12月 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 話数 | 全162話 |
『超越七光り英雄ムカデマン』(ちょうえつななひかりえいゆうむかでまん)は、による日本の漫画。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『超越七光り英雄ムカデマン』は、からにかけてにおいて連載されたである。七つの補助灯を頭部に戴く改造英雄ムカデマンが、神奈川県横浜市を中心に発生する「光脈異常」事件へ介入する物語として知られている[1]。
作中では、が当初想定していた読者層を大きく超え、深夜帯の、舞台化、児童向けソフト菓子とのを経て、2000年代初頭の「一部でだけ異様に流行した社会現象」と評されるに至った。累計発行部数はを突破したとされる[2]。
制作背景[編集]
作者のは、もともとの怪人デザインを手がけていたが、の夏に東京都の古い地下街で見た「階段照明の点滅」が着想源になったと語っている。本人によれば、七つの灯りが不規則に点いたり消えたりする様子が「家族の七光り」と「個人の努力」を同時に象徴していたという。
編集部は当初、主人公を単純な虫型改造人間として提案していたが、霧島は「ムカデは多足であるがゆえに、逃げる理由が一つではない」として設定を押し切った。なお、連載開始時の担当編集・が付けた仮題『七灯足走者』は、打ち合わせ三回目で完全に廃案となったとされる[3]。
また、本作の背景美術には、、および実在しない「第九光区」が頻出する。特に第32話で描かれた倉庫街の反射描写は、当時のアシスタント6名が東京都台東区の金物問屋街で3日間張り込みを行って得た資料に基づくとされている。
あらすじ[編集]
第一部・起動編[編集]
相模原市の高校生は、祖父の遺品である七連式ヘルメットを試着したことから、改造英雄として覚醒する。ヘルメットには七つの補助灯が内蔵されており、祖父がかつてに所属していた秘密技師であったことが判明する。初期は一話完結の怪事件が中心であったが、第一部の終盤で「英雄は誰から光を借りているのか」という主題が提示され、読者の評価が急上昇した。
第二部・七光り都市編[編集]
舞台は東京都湾岸部の再開発地区「セブン・レイヤーズ区」に移り、企業連合が管理する人工照明網の下で、住民の記憶が断片化する事件が続発する。ムカデマンは、七つの灯りを一つずつ失うたびに別人格的な必殺技を解放するが、その代償として各灯りの担当者に給料明細のような副作用が現れるという、極めて説明しづらい展開が話題となった。
第三部・超越回廊編[編集]
物語終盤では、ムカデマンが「七光り」の出自そのものを断つため、海底に沈んだ旧の実験施設へ向かう。そこでは、英雄制度が本来、才能ではなく照度差を管理するための行政装置だったことが示され、作品にしては珍しく政治劇の比重が高い。最終決戦でムカデマンは自らの頭部の一灯を消し、残る六灯を民間人へ分配することで決着するが、この結末は当時の編集会議で二度差し戻されたといわれる。
登場人物[編集]
/ ムカデマン 本作の主人公。普段は神奈川県の照明保守会社で働く二十代半ばの青年で、家族の七光りを「恥」ではなく「継承」として引き受ける珍しいタイプのヒーローである。必殺技「七段階反射突進」は、作画コストの都合で背景が毎回簡略化されるため、後年の単行本では逆に人気が出た。
進の姉。市役所勤務であり、作中では最も現実的な人物として描かれる一方、なぜか第8巻以降は光学用語に異常に詳しくなる。読者投稿コーナーでは「最も説明責任が重いキャラ」として毎号のように名前が挙がった。
編集部の担当者をモデルにした人物。作中では「編集長補佐・市村」として登場し、ムカデマンの設定を毎回半分だけ正しく理解している。作者は「彼がいなければ本作は3話で終わっていた」と述べたという。
第2部から登場する謎の研究者。七つの補助灯を宗教的に解釈する学者で、作中ではムカデマンよりも先に設定資料集を読み切った人物として扱われる。実在の人物ではないが、ファンの間ではの特定司書がモデルではないかと長く噂された。
用語・世界観[編集]
光脈異常 都市部の照明密度が一定以上に達した際、住民の記憶や判断が短時間だけ同期してしまう現象。劇中ではが1978年から調査していたとされるが、実際には会報が6号で止まっているという記述がある[要出典]。
七光り 本作における「七光り」は血縁による恩恵だけを指さず、組織・施設・制度・習慣のいずれかから無償で借り受ける光全般を意味する。第14巻で提示された定義は、のちにファンの間で「就活用語としても使える」と誤用され、作者が困惑したとされる。
ムカデ装甲 ムカデマンの脚部と背部に展開される可変装甲。足の数は常に120本と説明されるが、コマによって96本だったり132本だったりするため、作画班の間では「見た者の社会的地位で本数が変わる装備」と呼ばれていた。
セブン・レイヤーズ区 東京都湾岸にある架空の再開発地区。実在の地名を思わせるが、地図上では未確認であり、作中でも毎年区画が一層ずつ増えるため、行政側が把握を放棄した設定になっている。
書誌情報[編集]
単行本はより全18巻で刊行された。初版帯には「ヒーロー漫画の外側から光を撃つ」との宣伝文句が添えられ、第7巻までは帯コピーが毎巻すべて異なっていた。
また、には豪華版『超越七光り英雄ムカデマン 光脈大全』が刊行され、設定資料・没案・作者のメモに加えて「存在しない第0話」のネームが収録された。これがのちにファンの間で半ば公認の正史となり、単行本より先に研究対象になったといわれる。
メディア展開[編集]
には系列で深夜アニメ化された。放送枠は23時58分開始で、スポンサー読みが毎回やけに長かったため、最終回の前半2分が地域の道路情報で埋まった回が伝説となっている。
同年にはが公開され、興行収入はと発表された。もっとも、公開館数が全国で14館にとどまったことから、地元商店街の集客効果のほうが大きかったとの見方もある。
さらに、の育成ゲーム、舞台『ムカデマン—照明の右手—』、および横浜市内の商業施設をめぐるスタンプラリーが行われた。特にスタンプラリーは参加者の68%が「完走すると何がもらえるのか最後まで理解していなかった」とされ、作品人気の不可解さを象徴する事例として引用される。
反響・評価[編集]
本作は、当初は「設定が込みすぎている」と批判された一方で、連載中盤以降は「現代日本の縁故主義と照明行政をここまで同時に風刺した作品はない」として研究対象になった。特にの一部ゼミでは、2006年度に本作の第41話が「都市倫理の教材」として扱われたとされる。
読者アンケートでは主人公よりも補助灯の一つである「第四灯」の人気が高く、単行本第12巻の付録シールは発売当日に名古屋市周辺で品切れとなった。また、海外では英訳版『Centipede of Seven Lights』がカナダとシンガポールで少部数刊行され、タイトルの異様さだけが先行して紹介された。
なお、最終回掲載号の編集後記には「ムカデの足音が最も静かなヒーロー漫画だった」と書かれており、読者投稿欄でも賛否が割れた。もっとも、同号の巻末アンケート回収率が92.6%に達していたことから、熱量だけは極めて高かったと評価されている。
脚注[編集]
[1] 霧島譲二『超越七光り英雄ムカデマン』第1巻、銀河出版、1997年、pp. 3-7。
[2] 銀河出版編集部「1997年度ネビュラ・コミックス発行実績」『月刊ネビュラジャンプ』第9巻第4号、1998年、pp. 112-113。
[3] 市村康弘「七灯足走者からムカデマンへ」『編集会議録アーカイブ』第2号、銀河出版資料室、2006年、pp. 14-16。
[4] 北條倫子『都市照明と英雄神話の再編』照明文化研究所、2008年、pp. 201-229。
[5] David H. Fenwick, "Seven Lamps and One Spine: The Semiotics of Heroic Lighting" in Journal of Transurban Comics, Vol. 14, No. 2, 2010, pp. 45-61。
[6] 霧島譲二・監修『超越七光り英雄ムカデマン 光脈大全』銀河出版、2002年、pp. 8-19。
[7] 佐伯真由美『深夜アニメと局地的熱狂』東都新書、2009年、pp. 77-91。
[8] 山口一成「ムカデ装甲の可変本数に関する作画史的考察」『漫画技術学会誌』第18巻第1号、2011年、pp. 5-12。
脚注
- ^ 霧島譲二『超越七光り英雄ムカデマン』第1巻、銀河出版、1997年、pp. 3-7.
- ^ 銀河出版編集部「1997年度ネビュラ・コミックス発行実績」『月刊ネビュラジャンプ』第9巻第4号、1998年、pp. 112-113.
- ^ 市村康弘「七灯足走者からムカデマンへ」『編集会議録アーカイブ』第2号、銀河出版資料室、2006年、pp. 14-16.
- ^ 北條倫子『都市照明と英雄神話の再編』照明文化研究所、2008年、pp. 201-229.
- ^ David H. Fenwick, "Seven Lamps and One Spine: The Semiotics of Heroic Lighting" in Journal of Transurban Comics, Vol. 14, No. 2, 2010, pp. 45-61.
- ^ 霧島譲二・監修『超越七光り英雄ムカデマン 光脈大全』銀河出版、2002年、pp. 8-19.
- ^ 佐伯真由美『深夜アニメと局地的熱狂』東都新書、2009年、pp. 77-91.
- ^ 山口一成「ムカデ装甲の可変本数に関する作画史的考察」『漫画技術学会誌』第18巻第1号、2011年、pp. 5-12.
- ^ 清水玲子「湾岸再開発と架空英雄の受容」『都市文化評論』第11巻第3号、2012年、pp. 33-49.
- ^ Margaret L. Arden, "Brotherhood, Lamps, and the Improvised Pedipod" in Neo-Manga Studies Review, Vol. 7, No. 1, 2013, pp. 90-104.
外部リンク
- 銀河出版作品データベース
- 月刊ネビュラジャンプ公式アーカイブ
- ムカデマン設定資料館
- 光脈文化研究センター
- 深夜アニメ放送史保存会