野獣先輩は妊娠中
| 名前 | 野獣先輩は妊娠中 |
|---|---|
| 画像 | YajuSenpaiPregnant_live.jpg |
| 画像説明 | 2019年の《胎内通信》ツアー東京公演 |
| 画像サイズ | 280px |
| 画像補正 | yes |
| 背景色 | #6b4f7a |
| 別名 | 野妊、YSPG |
| 出生名 | 野獣先輩は妊娠中 |
| 出身地 | 東京都杉並区高円寺 |
| ジャンル | インダストリアル・ポップ、ネットロック、擬似胎児アンビエント |
| 職業 | 歌手、作詞家、作曲家、舞台演出家 |
| 担当楽器 | ボーカル、シンセサイザー、足踏みシーケンサー |
| 活動期間 | 2014年 - 現在 |
| レーベル | Helix Echo Works |
| 事務所 | 株式会社月蝕レコード |
| 共同作業者 | 真鍋千景、久留島レイ、白川ミノリ |
| メンバー | 野獣先輩(Vocal)、先輩β(Programming)、産声Q(Percussion)、胎動ミオ(Chorus) |
| 旧メンバー | 先輩α、臨月タク |
| 公式サイト | yajusenpai-hn.jp |
野獣先輩は妊娠中(やじゅうせんぱいはにんしんちゅう)は、日本の4人組インダストリアル・ポップユニットである。所属事務所は株式会社月蝕レコード。レコード会社はHelix Echo Works。2014年に結成、2018年にメジャーデビュー。略称は「野妊(やにん)」。
概要[編集]
野獣先輩は妊娠中は、東京都発のインターネット音楽から派生した4人組音楽ユニットである。2010年代中盤に匿名掲示板文化とライブハウス文化の接点から誕生し、自己否定的なユーモアと過剰に荘厳なサウンドを融合させた作風で知られている[1]。
歌詞には高円寺、中野、新宿などの都市圏の細部描写が頻出し、また胎内音響を模した低周波処理が特徴である。ファン層は「通過者」と呼ばれ、ライブ終演後に配られる整理券が出生届の様式を模していることでも話題になった[2]。
メンバー[編集]
現行メンバーは4名であり、全員が仮名を用いて活動している。
野獣先輩(ボーカル)は、グループの中心人物とされるが、ステージ上ではほとんど発言せず、代わりに口唇同期用のLED字幕が長く流れる。先輩β(プログラミング)は2020年以降の中核で、音源の大半を一人で設計したとされる。産声Q(パーカッション)は鉄板、ベビーカーの車輪、給食用アルミ皿を用いることで知られる。胎動ミオ(コーラス)は高音域の持続音を担当し、初期はライブ会場の空調ノイズと誤認されたことがある[3]。
旧メンバーには先輩αと臨月タクがいたが、2017年の《仮想子宮セッション》以降は活動から離れた。脱退理由については「音圧に対する倫理観の差」と説明されたが、詳細は明らかになっていない。
バンド名の由来[編集]
バンド名は、結成前夜に高円寺の小劇場で上演された即興演劇《野獣先輩は妊娠中のため入場無料》に由来するとされる。演出ノートによれば、観客の半数がタイトルだけで帰宅し、残りの半数が「内容を理解した気になった」ことが出発点であったという。
一説には、当時のフライヤーを誤植した印刷所が「妊娠中」を強調するため赤インクを多用し、それが夜間に“発光するバンド名”として認識されたことが契機であるともいう。なお、本人たちはこの由来をたびたび否定しているが、否定する際の言い回しが毎回少しずつ違うため、かえって伝説化した。
来歴[編集]
結成からインディーズ時代まで[編集]
2014年春、杉並区のレンタルスタジオで行われた深夜セッションを契機に結成された。もともとは匿名の録音実験集団であったが、同年末に公開されたデモ音源《胎内通信-0》が動画共有サイトで9万回再生を超え、以後ユニットとしての体裁を整えた。
インディーズ時代は、月1回の限定配布CD-Rと、ライブ後の即売で収支を保っていた。初期は1公演あたり平均17人程度の観客しか集まらなかったが、音響スタッフの証言によれば「最後列まで鼓膜に届く圧が異常だった」ことから口コミが広がったという。
メジャーデビュー[編集]
2018年、Helix Echo Worksよりシングル『子宮の外でも踊れる』でメジャーデビューを果たした。同作はオリコン週間チャートで14位を記録したが、同時に収録された無音トラックが一部店舗で“最長の曲”として扱われ、広報面での成功につながった。
この時期、所属事務所の株式会社月蝕レコードは都内の宣伝文に「国民的妊娠系ユニット」と記載し、後に誤解を招いたとして修正したが、略称の「野妊」だけは定着した。
音楽性[編集]
音楽性は、ノイズ・ポップを基調にしながら、産婦人科の待合室で流れるような穏やかなコード進行と、工場用ベルトコンベアの機械音を混ぜたものとされる。とりわけ低域の揺らぎは「胎動ベース」と呼ばれ、短時間で心拍数を上げる効果があるとファンの間で語られている。
作詞面では、自己神話化と日常の矮小な不安が併置される傾向があり、代表曲『保健室でハイハット』では、放課後の教室とエコー検査室が同一の景色として描かれている。音楽評論家の真鍋千景は「J-POPの語彙で不条理劇をやっている」と評したが、本人たちは「むしろ健康診断である」と応答した[4]。
人物[編集]
メンバーの素性については公的資料が少なく、年齢・本名ともに一部しか明らかでない。野獣先輩はインタビューでほとんど笑わないが、差し入れの蒸しパンを見ると急に饒舌になるとされる。
また、ライブ前に必ず会場周辺の自販機でミネラルウォーターを4本買う習慣がある。これは「喉を潤すため」ではなく、「4人組であることを忘れないため」と説明されている。産声Qは神奈川県出身、胎動ミオは愛知県出身という説が有力であるが、いずれも本人が否定しており、出身地を巡るファン考察は現在も続いている。
なお、先輩βは楽屋で必ず手書きの家計簿をつけており、機材費を「子育て費」と記載することがある。この記載が税務上どのように処理されたかは不明である。
評価[編集]
批評面では、過剰なコンセプト性と、妙に実務的な音作りとの落差が高く評価されている。特に2018年のデビュー以降は、ネット由来の一発芸として消費されることを避けつつ、ライブバンドとしての持続力を獲得した点が注目された。
一方で、タイトルの強烈さから番組表に掲載しづらい、図書館の書誌情報に向かない、学校祭の看板に書くと保護者が首をかしげる、といった実務上の問題も指摘されている。もっとも、それらの不便さ自体が話題性を増幅させたともいわれ、結果として「社会現象となった」とする雑誌記事も複数存在する。
受賞歴・記録[編集]
2019年に《胎内通信》が日本インターネット音楽賞新人賞を受賞した。審査員コメントでは「タイトル先行かと思いきや、サビが異常に良い」と評された。
また、2022年には配信シングル『へその緒の向こう側』が、発売から72時間で37万ダウンロードを記録し、ユニット史上最高の初動となった。なお、同曲の最後に収録された33秒の沈黙が、某配信サービスで“環境音”に分類されたため、再生数に特殊な補正がかかった可能性があると報じられた[5]。
ディスコグラフィ[編集]
=== シングル === * 子宮の外でも踊れる(2018年) * へその緒の向こう側(2022年) * 夜間母体ラジオ(2024年)
=== アルバム === * 胎内通信(2019年) * 羊水の街角(2021年) * 分娩台の上で会おう(2023年)
=== ベスト・アルバム === * 先輩総集編 Vol.1(2025年)
=== 映像作品 === * 《胎内通信》Tour Final at 中野サンプラザ跡地(2020年) * 《無音トラックの長い夜》Documentary(2024年)
=== 配信限定 === * 仮想子宮EP(2017年) * 産声のためのリマスター集(2021年)
=== CDシングル === * 体温計は歌わない(2018年)
=== ストリーミング認定 === * 『羊水の街角』:プラチナ認定相当(架空機関調べ) * 『へその緒の向こう側』:ゴールド認定相当
タイアップ一覧[編集]
『子宮の外でも踊れる』は、架空の飲料リズム炭酸ゼロのCMソングに起用された。キャッチコピーは「泡立つ前に、もう聴こえる」であった。
『夜間母体ラジオ』は深夜情報番組《マチカド保健室》のエンディングテーマとなり、『体温計は歌わない』は東京都の区民ホール再開キャンペーンに使用された。さらに、2023年には高円寺の商店街と連携したスタンプラリー企画《妊娠中でも回れる街》が実施され、参加者は12店舗を巡って限定ステッカーを受け取った。
ライブ・イベント[編集]
ライブは演劇的構成を伴うことで知られ、開演前に観客へ配布される紙片には「第1幕:胎動」「第2幕:歩行」「第3幕:出産後の静寂」と印字されている。2020年の無観客配信ライブ《一人でも増える気配》では、視聴者コメントが3万件を超えた一方、ステージ上には誰もいないまま40分が経過した。
また、ファンミーティングでは毎回「へその緒結びの儀」が行われるが、実際には青いリボンを結ぶだけである。主催者によれば、これは“参加者同士の一時的な血縁意識”を作るためだという。
出演[編集]
テレビ出演は少ないが、情報番組や深夜バラエティへのゲスト出演歴がある。特にNHKの音楽番組《うたコン》風の再現企画で披露した『臨月ラプソディ』は、スタジオ内の照明が想定より暗くなり、出演者全員の輪郭が曖昧になったことで知られる。
ラジオでは《野獣先輩は妊娠中の産前深夜便》という自局番組を持ち、毎回最後に15秒の胎動音が流れる。映画ではドキュメンタリー風短編《羊水の記録》に出演し、CMでは前述の飲料以外に、骨盤サポート椅子の広告にも起用された。
NHK紅白歌合戦出場歴[編集]
2024年に初出場を果たしたと発表されたが、実際には《特別企画・未来のうた》枠での出演であり、正式な出場扱いを巡って当時から議論があった。披露曲は『へその緒の向こう側』で、楽曲の終盤でステージ中央から巨大な円形リボンが降下する演出が行われた。
なお、番組スタッフの証言では、リハーサル時に「妊娠中という語を歌番組表に載せると検索が荒れる」として、タイトル表記を一時的に『野獣先輩は……中』へ修正したという。これは後に番組アーカイブ上で確認されたが、公式には触れられていない。
脚注[編集]
1. これらの記述は主にファンジン『胎内通信研究』第3号に依拠する。 2. 一部のライブ会場では、整理番号が出生順と呼ばれる。 3. 産声Qの使用楽器は公演ごとに変動するため、厳密な固定編成ではない。 4. 真鍋千景の評は『月刊ノイズ評論』2020年8月号に掲載された。 5. 配信数の補正問題は、後年になっても完全には解決していない。
外部リンク[編集]
公式サイト
月蝕レコード アーティストページ
Helix Echo Works ディスコグラフィ
胎内通信研究アーカイブ
高円寺ポップ史資料室
脚注
- ^ 真鍋千景『野獣先輩は妊娠中論』月刊ノイズ評論社, 2020, pp. 14-29.
- ^ 白川ミノリ『都市胎動とインターネット音楽』Helix Press, 2021, Vol. 12, No. 2, pp. 33-51.
- ^ 久留島レイ『匿名ユニットの成立条件』音響文化研究所, 2019, 第4巻第1号, pp. 7-18.
- ^ T. Watano, “Pregnancy as Stage Persona in Japanese Net Rock,” Journal of Applied Pop Studies, 2022, Vol. 8, No. 4, pp. 201-219.
- ^ 佐伯篤『高円寺サブカルチャー史』杉並出版, 2018, pp. 88-97.
- ^ M. K. Thornton, “Echoes of the Womb: Low Frequency Aesthetics in Urban Performance,” Sound & Society Review, 2023, Vol. 15, No. 1, pp. 1-26.
- ^ 株式会社月蝕レコード編『胎内通信 公式記録集』月蝕文庫, 2020, pp. 102-131.
- ^ 小田切悠『配信時代の無音トラック論』日本ポップメディア学会誌, 2024, 第9巻第3号, pp. 55-63.
- ^ R. S. Bell, “The Long Silence After the Chorus,” International Review of Media Mythologies, 2021, Vol. 6, No. 2, pp. 77-89.
- ^ 森下つばさ『へその緒の向こう側とその周辺』架空音楽出版社, 2022, pp. 3-17.
外部リンク
- 公式サイト
- 月蝕レコード アーティストページ
- Helix Echo Works ディスコグラフィ
- 胎内通信研究アーカイブ
- 高円寺ポップ史資料室