あにわまやはやなや
| タイトル | あにわまやはやなや |
|---|---|
| 画像 | Aniwa_Mayahanaya_boxart.png |
| 画像サイズ | 220px |
| caption | 北鴉ソフトウェア版パッケージ |
| ジャンル | コンピュータRPG |
| 対応機種 | セレステラ |
| 開発元 | 北鴉ソフトウェア 第三開発部 |
| 発売元 | 北鴉ソフトウェア |
| プロデューサー | 沢渡 恒一 |
| ディレクター | 三枝 玲子 |
| デザイナー | 長谷川 透、朧木 みさと |
| プログラマー | 宮前 仁、佐伯 智也 |
| 音楽 | 神代 リュウ |
| シリーズ | アニワ語録シリーズ |
| 発売日 | 1997年11月21日 |
| 対象年齢 | CERO相当B |
| 売上本数 | 全世界累計184万本 |
| その他 | 後にテレビアニメ化、ドラマCD化された |
『あにわまやはやなや』(英: Aniwa Mayahanaya)は、に日本のから発売された用コンピュータRPGである。の始祖・元祖として知られる[1]。
概要[編集]
『あにわまやはやなや』は、を舞台とするである。プレイヤーは、音節を組み替えて呪文や道具名を生成しながら進行する「逆読式コマンド」を扱うことで知られている。
本作は、発売当初は小規模な実験作とみなされていたが、発売後に東京都千代田区の中古ゲーム店で想定外の回転率を記録し、年末商戦では向けソフトとして異例の品薄状態になったとされる。また、タイトルがそのまま呪文名として扱われる仕様が話題を呼び、口コミを通じて若年層よりもやの学生に先に広まったという。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、画面上に表示された断片語を選択し、五十音の並びを「崩し」「戻す」ことで行動を決定する方式が採用されている。たとえば「やなや」を「や→な→や」と分節すると回復、逆に「や→や→な」に並べ替えると封印術となるなど、同じ文字列でも文脈によって効果が変化する設計である。
開発資料によれば、当初は通常ので作成されていたが、が「文字が減るほど世界が増える」という謎の社内メモを残したことから、現在の変則的なUIに変更されたとされる[2]。なお、入力候補の総数は理論上8,192通りであるが、実際に意味があるのはそのうち137通りのみであるという。
戦闘[編集]
戦闘はで進行し、プレイヤーは「語根」「抑揚」「余白」の3系統を管理する。語根が尽きると通常攻撃しかできなくなるが、抑揚が高いと敵対の行動を一時的に中断できるため、上級者は攻撃よりも会話を重視する傾向がある。
また、特定の敵は「濁点」を弱点としており、濁音を含む術式を当てると扱いになる。これにより、難度の高いボス戦では「ぎゃ」「ざ」「ぶ」など、日常会話でほとんど使われない音節が急に実戦投入される点が、当時の雑誌レビューで高く評価された。
アイテム[編集]
アイテムはすべて短い音列で表記され、正式名称よりも通称で流通することが多い。代表的なものに、HPを少量回復する、文字列の並びを一度だけ固定する、誤読した敵を一斉に眠らせるなどがある。
中でも有名なのはで、所持しているとショップでの会話選択肢が一部「詩的」になる。これはバランス調整のつもりで実装されたが、結果としてプレイヤーが店主と長く雑談する副作用を生み、実際のプレイ時間の約3割が買い物に費やされたという調査結果が残る[3]。
対戦モード[編集]
対戦モードでは、2人のプレイヤーが同じ単語群から呪文を組み立て、相手より先に「意味崩壊」を起こさせることを目指す。ローカル通信によるにも対応しており、片方が語尾を担当し、もう片方が語幹を担当する変則的な役割分担が可能である。
一方で、対戦環境では「長音の連打」が強すぎるとして発売翌月に緊急パッチが配布された。これにより、全国の学校帰りのプレイヤーが「ー」だけで勝負を終わらせる現象が一時的に流行したと報じられている。
オフラインモード[編集]
オフラインモードには「黙読探索」と呼ばれる特殊ルールがあり、BGMを完全に消した状態で進行すると隠し通路が増える。これは神代リュウの提案によるもので、プレイヤーの足音と文字送り音だけを残すことで、紙芝居に近い没入感を生む狙いがあった。
また、セーブデータを読み込むたびに前回の終了時刻が「文章の余韻」として表示される仕様があり、深夜2時台に終了した場合のみ宿屋の値段が上がる。こうした細部の作り込みが、後年「生活習慣にまで干渉するRPG」と評される一因となった。
ストーリー[編集]
物語は、で失われた「最初の音節」を探す少年少女の旅を描く。主人公は、街の記録庫に勤める見習い書記であり、ある日、空白の巻物から「まやはやなや」という意味不明の文言を読み上げたことで、都市全体の看板や地図が書き換わってしまう。
以後、イオはの地下に広がる音韻迷宮を進み、各地区の語彙を守る「語門番」と会うことになる。中盤では、都市の建設者であるが、実は街を守るために言葉そのものを封じていたことが判明し、主人公は「話すこと」と「黙ること」のどちらが世界を救うかを問われる。
終盤、真の黒幕であるは、都市から母音を一つずつ削り取ることで永遠の秩序を実現しようとする。最終決戦では、プレイヤーがこれまで収集した語根をすべて一列に並べ、タイトルそのものを逆順に唱えることで封印を解くが、その反動でエンディングの字幕が8分ほどずれて流れる演出があったとされる。
登場人物[編集]
主人公[編集]
は、の見習い書記である。穏やかな性格だが、音節の欠落に異常な反応を示し、会話中に「今のは三拍目が足りない」と指摘する癖がある。プレイヤーの選択によっては、後半で自らが「失われた母音の保管者」であったと気づく。
仲間[編集]
仲間キャラクターとしては、発明家の、元語学教師の、そして自分の名前を一度も正確に書けない剣士が登場する。とくにシラベは、戦闘中に名前入力ミスが多いほど能力が上昇するという珍しい仕様を持ち、攻略本では「入力欄に愛された男」と紹介された。
ほかに、条件次第で加入するは、敵味方を問わず文章を朗読してしまうため、パーティー会話が長くなりがちである。これが結果的に回復効率を高めるため、上級者の間では「歩く全文検索」とも呼ばれている。
敵[編集]
敵役は、の職員を中心に構成される。雑魚敵のはいずれも見た目は地味であるが、状態異常「読後感」を付与してくるため厄介である。
ボスキャラクターの中でもは特に人気が高く、当時のファンブックでは「悪役でありながら、一番丁寧に発音してくる人物」と評された。なお、隠しボスのはプレイヤーの入力履歴を模倣して戦うが、出現条件が「1周目で宿屋に17回泊まる」など過剰に細かく、存在自体を疑う声も多かった。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、あらゆる事物が「読み」「書き」「声」の三層で構成されているとされる。これをと呼び、都市の建築物や食器にまで表記揺れが存在する設定が導入されている。たとえば同じ橋でも、昼は「はし」、夜は「ばし」と読まれ、ゲーム内の地名検索に影響する。
さらに、と呼ばれる扉は、正しい音節を通した者だけが開ける仕組みで、開錠に失敗すると扉のほうが逆にプレイヤーを読んでしまう。この設定は当時の雑誌で「文章法に触れる冒険」と紹介され、教育現場では半ば冗談として国語辞典の横に置かれたという。
世界観の中心は、言葉が減るほど空が広くなるという奇妙な自然法則である。開発メモでは「静寂は面積を食う」と記されていたが、これは後に東京都内の小規模展示会で実際に引用され、来場者の半数が意味を理解できなかったと伝えられる。
開発[編集]
制作経緯[編集]
本作は、第三開発部が、社内研修用の「文字列再構成演習」を遊べる形にしたことから始まったとされる。最初期案は単なる教育ソフトであったが、社長のが深夜に試遊した際、「これは学習ではなく遭難である」と評し、RPG化が決定したという。
特に、タイトルの「あにわまやはやなや」は、開発室のホワイトボードに3日間消えずに残っていた誤字列をそのまま採用したものとされる。もっとも、後年のインタビューで担当者が「本当はメモの裏に書かれていた」と証言しており、どちらが正しいかは今なお定まっていない[4]。
スタッフ[編集]
ディレクターのは、前職が図書館司書であったことから、ゲーム中の文字管理に異常なこだわりを見せた。プログラマーのは、メモリ節約のため敵の台詞をすべて同一フォーマットで処理する仕組みを作ったが、その副作用で一部の敵がやたらと詩的になった。
音楽のは、和太鼓と電子音を組み合わせた「擬音レイヤー」を導入し、SEの一部を音階としても聴けるようにした。これにより、特定の洞窟で聞こえる足音が実はBメロであることに気づくプレイヤーが続出した。
音楽[編集]
サウンドトラックは、旋律よりも拍の欠落を重視した作曲で知られる。主題歌「まやはの灯」は、Aメロが9拍、Bメロが11拍、サビが14拍という不規則な構成を持ち、ラジオ番組では「最後までどこが頭なのかわからない曲」と紹介された。
また、ゲーム中のBGMには、自身が録音した駅のホームアナウンスや、東京都台東区の路地で収集した残響音が多数使われているとされる。ただし、スタッフの証言では「一部は社内の給湯室で録っただけ」とも言われており、出典によって話がかなり違う。
発売20周年記念盤では、未使用曲「無音局行進曲」が収録され、3分28秒の完全な無音から突然トライアングルが1回鳴るだけの構成が話題となった。これを巡っては賛否両論があったが、結果として同年の記念展示で最も長く聴かれた楽曲になったという。
移植版[編集]
本作は、翌年にの廉価版へ再収録されたのを皮切りに、、、さらに携帯端末向けの「ポケット語彙版」にも移植された。特にウィンドーム64版は、読み込み時間を利用してキャラクターが自動で朗読練習を始める独自仕様が追加され、一部では本編より人気があった。
2006年には相当の配信サービスで再登場し、当時のレビューでは「古びたUIがむしろ味になっている」と評された。なお、海外版ではタイトルが発音しづらいという理由で『Aniwa Mayahanaya: The Missing Vowels』に改題されたが、パッケージ裏面の説明文が半分以上誤訳で、逆にコレクター人気を押し上げた。
評価[編集]
発売当初の売上は伸び悩んだものの、口コミと雑誌付録の攻略シートを通じてじわじわ拡大し、最終的にを突破したとされる。特に1998年夏の再出荷分は、発売から2時間で完売した店舗がに達し、北鴉ソフトウェアの経営を救ったとまで言われている。
批評面では、ファミ通系のレビューで「奇妙だが筋は通っている」と評されたほか、の選考会では「言語感覚をゲームプレイに落とし込んだ点」が注目された。一方で、語学教育の専門家からは「学習教材としては誤読を助長する」との指摘があり、学校教材への採用は見送られた[5]。
関連作品[編集]
続編として『』がに発売され、シリーズ一作目にあたる本作のシステムをより複雑化させた。また、外伝『』は要素を導入したことで賛否が分かれた。
ほかに、テレビアニメ『』、ドラマCD『』、小説版『』などが展開され、いわゆるの成功例として扱われることがある。もっとも、アニメ版第8話でタイトルの読みが毎回微妙に変わる演出は、制作側が意図したものか偶然かで長く論争になった。
関連商品[編集]
攻略本としては、『』がから刊行され、全412ページのうち198ページが「使わない単語一覧」で占められている。これが逆に実用的だとして、受験生の間で参考書代わりに購入する者が出たという。
また、書籍『』と『』は、ゲームファン向け資料でありながら言語学の棚にも置かれた。その他、限定グッズとして「語門キーホルダー」「母音コースター」「読み仮名消しゴム」が発売されたが、消しゴムだけは本当に文字が消えすぎるとして回収対象になった。
脚注[編集]
注釈[編集]
1. タイトルの読みは公式には「あにわまやはやなや」で統一されているが、初期出荷の説明書では一度だけ「あにわまやなやはや」と誤植されていた。 2. 開発元内部では、完成直前まで仮題『仮名の迷宮』として呼ばれていた。 3. 店舗調査の数字は、北鴉ソフトウェア広報室が独自に集計したもので、集計方法の詳細は公表されていない。
出典[編集]
本項目の一部は、当時のゲーム雑誌『電脳遊戯時報』、ファン会報『語門通信』、および北鴉ソフトウェア社史資料集に基づくとされる。ただし、資料間で発売日と初回出荷数が一致しない箇所があり、後年の研究でも完全には整理されていない。
参考文献[編集]
1. 沢渡 恒一『翻訳するゲームの作法』北鴉出版、1999年。 2. 三枝 玲子『文字列と迷宮設計』双葉書房、2001年。 3. 神代 リュウ『擬音レイヤー入門』音映社、2004年。 4. 佐伯 智也「セレステラ用ソフトにおける逆読式UIの実装」『電脳遊戯研究』Vol. 12, No. 3, pp. 44-61, 2002. 5. Margaret L. Thornwood, "Vowel Removal and Narrative Compression in Early Console RPGs," Journal of Imaginary Game Studies, Vol. 8, No. 1, pp. 5-29, 2010. 6. 朧木 みさと『あにわまやはやなや設定資料集』北鴉ソフトウェア、1998年。 7. Hiroto Kageyama, "The Missing Middle of Japanese Puzzle-RPGs," Game & Language Review, Vol. 4, No. 2, pp. 77-96, 2007. 8. 語学遊戯学会編『ゲームと音節の社会史』みやこ学術出版、2015年。 9. 宮前 仁「音声未満の効果音設計」『プログラマーズ・メモ』第6巻第4号, pp. 18-22, 1998. 10. 『あにわまやはやなや 20周年記念資料集』北鴉ソフトウェア、2017年。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
北鴉ソフトウェア 公式アーカイブ
語門通信デジタル版
アニワ語録シリーズ総合案内
電脳遊戯博物館「90年代翻訳RPG特集」
迷宮都市アニワ観光局 特設ページ
脚注
- ^ 沢渡 恒一『翻訳するゲームの作法』北鴉出版、1999年.
- ^ 三枝 玲子『文字列と迷宮設計』双葉書房、2001年.
- ^ 神代 リュウ『擬音レイヤー入門』音映社、2004年.
- ^ 佐伯 智也「セレステラ用ソフトにおける逆読式UIの実装」『電脳遊戯研究』Vol. 12, No. 3, pp. 44-61, 2002.
- ^ Margaret L. Thornwood, "Vowel Removal and Narrative Compression in Early Console RPGs," Journal of Imaginary Game Studies, Vol. 8, No. 1, pp. 5-29, 2010.
- ^ 朧木 みさと『あにわまやはやなや設定資料集』北鴉ソフトウェア、1998年.
- ^ Hiroto Kageyama, "The Missing Middle of Japanese Puzzle-RPGs," Game & Language Review, Vol. 4, No. 2, pp. 77-96, 2007.
- ^ 語学遊戯学会編『ゲームと音節の社会史』みやこ学術出版、2015年.
- ^ 宮前 仁「音声未満の効果音設計」『プログラマーズ・メモ』第6巻第4号, pp. 18-22, 1998.
- ^ 『あにわまやはやなや 20周年記念資料集』北鴉ソフトウェア、2017年.
外部リンク
- 北鴉ソフトウェア 公式アーカイブ
- 語門通信デジタル版
- アニワ語録シリーズ総合案内
- 電脳遊戯博物館「90年代翻訳RPG特集」
- 迷宮都市アニワ観光局 特設ページ