地元愛Deja-Dash!!!
| 名称 | 地元愛Deja-Dash!!! |
|---|---|
| 分類 | 回遊型観光促進プログラム |
| 初出 | 1988年ごろ |
| 提唱者 | 高見沢嘉平(たかみざわ かへい) |
| 実施地域 | 東北・北関東・瀬戸内の中規模都市圏 |
| 主催 | 地方創生推進協議会、商工会連合、青年会議所 |
| 特徴 | 周回導線、再訪スタンプ、方言アナウンス |
| 標語 | 一回目より二回目、二回目より三回目 |
| 関連指標 | 滞在時間、再来訪率、即席土産購入率 |
地元愛Deja-Dash!!!(じもとあいデジャダッシュ)は、日本の地方自治体や商店街が共同で実施する、短時間で地元の魅力を反復体験させるための回遊型イベント方式である[1]。参加者が同じ道順を何度も走破し、既視感と高揚感を意図的に混在させる点に特徴がある[2]。
概要[編集]
地元愛Deja-Dash!!!は、、、などが協力し、参加者に同一地域を複数回めぐらせることで、土地勘の定着と愛着形成を同時に狙う制度である。名称のDeja-Dashは「既視感(デジャヴ)」と「疾走(dash)」を合成したもので、1980年代末の福島県南部で最初に使われたとされる[1]。
一般には地域振興策の一種とみなされるが、実際にはの閑散時間帯を埋めるための即興的な工夫が起源であったとされる。参加者は同じチェックポイントを朝・昼・夕で巡回し、同じ店で異なる方言の説明を受けることで「同じなのに違う」という感覚を得る仕組みになっている[2]。
歴史[編集]
誕生の経緯[編集]
通説では、の秋に前の再開発会議で、商店街の客足減少を憂えた高見沢嘉平が、隣接するの時刻表を見ながら「同じ町を何度も走れば、町は忘れられない」と発言したことが契機とされる。翌年、中心部の7か所を1周1.8kmで結ぶ試験企画が行われ、参加者112人のうち89人が2周目に突入した記録が残る[3]。
この初回実験では、各所に置かれた手書き札の文言が微妙に異なっており、同じ饅頭屋で3回目だけ値引きが適用されたことから、参加者の満足度が急上昇したとされる。なお、当日の実測では総移動距離が約13.6kmに達したにもかかわらず、公式報告書では「徒歩感覚である」と処理されている。
自治体への普及[編集]
1992年以降、この方式は宮城県新潟県の観光課に輸出され、各地で「同一ルート二重通過制度」「再訪型町歩き」などの名称に置き換えられた。ただし、最終的にはDeja-Dash!!!という原語が最も景気よく聞こえるとして、広報用語として定着した[4]。
後半には、総務省の外郭団体とされる「地域反復体験調整室」が実証事業をまとめ、滞在時間が平均23分延びた地域では土産物売上が1.4倍になったと報告した。もっとも、この統計は雨天時のアンケート回収箱に泥が付着していたため、信頼性に関する指摘がある[要出典]。
制度化と全国大会[編集]
にはで第1回「全国地元愛Deja-Dash!!!サミット」が開催され、参加自治体は18、実演商店は241、スタンプ台紙の総発行枚数は4万8000枚に達した。ここで「Dash値」という独自指標が導入され、同じ道を何回戻ったかを点数化する方式が採用された[5]。
一方で、商店街側からは「同じ客に3回説明する負担が大きい」「方言を演じ分けるための喉飴予算がかさむ」といった苦情も出た。これに対し運営側は、再訪1回ごとに小さな缶バッジを配布することで心理的抵抗を低下させたとされる。
仕組み[編集]
Deja-Dash!!!の基本構造は、①駅前で受付、②半径2km圏の店舗を巡回、③3周目で「地元検定」に挑戦、という三層から成る。参加者は同じ景色を見ているはずなのに、時間帯ごとに店主の口調や試食の量が変化するため、記憶の重複が意図的に発生する設計である[6]。
特に有名なのは「逆順スタンプ」で、1周目は北から南、2周目は南から北へ辿ることで、地図上の理解が反転する仕掛けである。これにより、初見では気づかなかった路地裏の手書き看板や、昭和期の公衆電話ボックスが「再発見」されやすいとされた。なお、町によっては3周目終了後に地元民しか読めない略語集を渡すため、観光客が半日かけて同じ交差点を行き来する事例もあった。
人物[編集]
高見沢嘉平[編集]
高見沢嘉平は、福島県中通りの元商工会職員で、1980年代後半に「観光は一回では薄い」と主張した人物である。趣味は製紙工場の裏手にある用水路の距離を歩測することで、Deja-Dash!!!の導線設計にもその癖が反映されたとされる。彼は晩年、自著『町は一度より二度目がうまい』で「人は地図ではなく匂いで帰ってくる」と書いたが、全文がやけに詩的であることから、実際には広報担当の代筆ではないかとの説もある[7]。
佐久間みどり[編集]
佐久間みどりは、仙台市のイベント企画会社「みちのく回遊計画」所属の演出家で、1990年代に方言アナウンスを体系化したとされる。彼女が導入した「二度目の説明は3割短く、しかし語尾だけは濃くする」という原則は、参加者の再訪意欲を高めたとされる。なお、本人は後年インタビューで「一番難しいのは地元愛を叫びながら道に迷わないこと」と述べたという[8]。
社会的影響[編集]
Deja-Dash!!!は、商店街の空洞化対策として一定の成果を挙げたとされ、2008年時点で導入地域の平均歩行回数は通常の観光イベントの2.7倍に達したという。これに伴い、スタンプ帳、再訪用うちわ、二巡目限定の甘酒など、派生商品が地方土産市場に多数現れた。
また、学校教育への波及も見られ、一部のでは地域学習の一環として「同じ場所を別の時間に見る」授業が実施された。生徒の感想文には「昨日と同じ自販機なのに、今日は偉そうに見えた」といった記述が残り、教育効果の高い体験学習として評価された一方、学年主任からは「移動だけで5時間かかった」との報告がある。
批判と論争[編集]
批判の多くは、回遊の反復が参加者に心理的疲労を与える点に向けられた。特に2011年の新潟県某市では、同じ団子屋に4回立ち寄るうちに店主が参加者の顔を覚えすぎてしまい、サービスが過剰に個別化したため、かえって公平性を欠いたとして議会で問題化した[要出典]。
また、Dash値の算出方法は、初期には「笑顔の回数」を含んでいたが、測定者ごとの差が大きく、最終的に「財布を開いた回数」に置き換えられた。この改定をめぐっては、観光学者の間で「地元愛の定量化は可能か」という論争が起こり、現在でも関連のシンポジウムでは定番の話題となっている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 高見沢嘉平『町は一度より二度目がうまい』東北地方振興出版, 1996年.
- ^ 佐久間みどり『回るほど愛着は増える——Deja-Dash実践論』みちのく回遊研究所, 2003年.
- ^ 渡部誠一『地方商店街の反復体験設計』地域計画ジャーナル Vol.14, No.2, pp.33-49, 2005年.
- ^ Martha J. Ellison, “Looped Affection and Civic Footfall,” Journal of Urban Folklore, Vol.22, Issue 4, pp.201-228, 2009.
- ^ 小笠原直人「再訪型イベントの定量評価」『観光政策研究』第18巻第1号, pp.11-27, 2010年.
- ^ Kenji Hori, “Dash Index as a Metric of Municipal Warmth,” Proceedings of the 6th International Symposium on Regional Sentiment, pp.74-81, 2012.
- ^ 福島県観光交流課編『地元愛Deja-Dash!!!導入事例集 1988-2008』県政資料室, 2008年.
- ^ Anne-Louise Pritchard, “A Semiotics of Repeated Convenience Stores,” Scandinavian Review of Place Studies, Vol.9, No.1, pp.5-19, 2011.
- ^ 鈴木保『方言アナウンス入門 町を二度聴く技術』北関東出版社, 2014年.
- ^ 西園寺ちえ『地図より先に匂いが来る——地方イベントの身体性』青雲社, 2017年.
- ^ 地方創生推進協議会監修『Dash値年鑑 2015』, 2015年.
- ^ Margaret H. Stone, “When the Same Street Feels New,” Urban Participation Quarterly, Vol.31, No.3, pp.88-103, 2019.
外部リンク
- 地元愛Deja-Dash!!!公式アーカイブ
- 全国地元反復体験協会
- みちのく回遊資料館
- Dash値統計室
- 商店街再訪研究ネット