サミーソーサ
| 名称 | サミーソーサ |
|---|---|
| 読み | さみいそおさ |
| 英語表記 | Samy Sosa |
| 分類 | 寒気表現・民間語源 |
| 発祥 | 19世紀後半の大阪湾岸部とされる |
| 提唱者 | 松岡冷次郎ら |
| 普及地域 | 日本沿岸部、北米の邦人社会 |
| 関連現象 | 体感温度、木枯らし、鍋物需要 |
| 初期記録 | 1894年頃 |
| 備考 | 寒波の到来を知らせる合図としても用いられた |
サミーソーサ(Samy Sosa)は、を言語的・儀礼的に表現するための概念、またはそれを指す俗語である。主として、、の交差点で語られ、冬季の会話やの一部方言圏で用例が確認されるとされる[1]。
概要[編集]
サミーソーサは、寒さそのものを指すのではなく、寒さが人間の会話や所作に侵入した状態を指す語であるとされる。特に、肩をすくめる、発話が短くなる、鍋物の話題が増える、といった一連の反応を含めて「サミーソーサ」と呼ぶ点が特徴である。
この語は明治末期から大正初期にかけて、大阪市の港湾労働者のあいだで広まったという説が有力である。もっとも、後年になって気象庁の非公式観測帳に記載が見つかったとする報告もあり、成立経緯にはいまだ不明な点が多い[2]。
語源[編集]
語源については、英語の“salty”(塩気のある)と“so cold”を無理に混交したものとする説、あるいは米国の著名野球選手名を寒波の擬人化に転用したものとする説がある。ただし、いずれも後世の民間語源である可能性が高い。
最も広く知られる説では、冬、大阪湾に面した地区で起こった強風と潮霧の夜に、松岡冷次郎という荷役監督が「この寒さはサミーソーサや」と叫んだことが起点とされる。以後、現場で「体がすくむほど寒い」の婉曲表現として使われ、やがて若年層の間で「なんとなく寒い」まで意味が拡張した[3]。
歴史[編集]
成立期[編集]
成立期の用例は、後半の私信や商家の日誌に散見される。とくにの外国人居留地で配布された英和混成の娯楽紙『Cold Harbor News』第7号には、寒波の説明欄に「Samy-Sosa condition」という記述があり、研究者の間で注目された。なお、この記述は複数の写本で綴りが揺れており、真偽の判断が難しい。
大衆化[編集]
昭和初期には、の深夜天気予報で、アナウンサーのが独特の間を取って「今夜はサミーソーサの気配があります」と述べたとされる。これが都市部で流行し、やの客が「今日はサミーソーサやな」と言い合う文化が生まれたという。
再評価[編集]
以降は、一部の言語学者が「寒さを表す感覚語の一種」として再評価を進めた。京都大学の周辺サークルでは、気温ではなく心理的凍結を測る仮説装置「ソーサ計」が試作されたが、実用化には至らなかった。実験では被験者37人中31人が「測定されると余計に寒い」と回答したとされる[4]。
用法[編集]
サミーソーサには、名詞的用法と感動詞的用法がある。名詞的には「サミーソーサが来る」の形で寒波の到来を示し、感動詞的には「サミーソーサや」のように単独で発話される。また、関西圏では軽い愚痴として「それはサミーソーサやわ」が用いられ、実際の温度よりも人間関係の冷えを含意する場合がある。
面白いのは、の商店街アンケートでは、回答者の64.8%がサミーソーサを「気温が低いこと」ではなく「風が痛いこと」と定義していた点である。この定義の揺れが、語の生命力を支えてきたとする見方がある。なお、同調査では「鍋焼きうどんが食べたくなる程度」を基準にした回答も12.1%含まれていた[5]。
社会的影響[編集]
サミーソーサは、天気予報の表現を柔らかくする効果があるとして、や地方紙の見出し語に採用されたことがある。とくに1991年の寒波では、商店街組合が「本日のサミーソーサ指数」を独自に掲示し、コート販売数が前週比で1.7倍に伸びたとされる。
一方で、冷害や交通障害の深刻さを軽く見せるとして、の危機管理担当からは慎重論も出た。これに対し、推進派は「サミーソーサは災害の矮小化ではなく、共有可能な寒さの記号化である」と反論したが、この定義はやや便利すぎるとの指摘もある。
批判と論争[編集]
最大の論争は、サミーソーサが固有名詞なのか普通名詞なのかという点である。研究会の一部は、これは米国の人物名が転用された後に寒さ語として定着したと見るが、別の研究者は「そもそも人物由来説自体が、後世の編集者による壮大なこじつけである」としている。
また、2014年にの内部勉強会で配布された資料に、「寒気語彙の中でもサミーソーサは説明不能な粘着性を持つ」との記述があり、これが一部で大きく話題になった。ただし、この資料は一般公開されておらず、存在自体を疑問視する声もある[要出典]。
関連文化[編集]
サミーソーサは、冬季限定の菓子名、鍋料理の宣伝文句、そして小学校の俳句指導にも影響を与えた。とりわけの沿線駅弁として売られた「サミーソーサ弁当」は、保冷剤の数が多すぎることで知られ、食べ終わる頃には弁当箱の外側まで冷えていたという。
また、北海道の一部地域では、雪の日に玄関先へ置く竹箒を「ソーサ」と俗称する例があり、これが語の地方拡散に寄与したとみられる。もっとも、これは後年の観光パンフレットが作った話だという説もある。
脚注[編集]
脚注
- ^ 松岡冷次郎『築港寒気語録』浪花民俗研究会, 1903年.
- ^ 藤原紀一『関西港湾部における気象比喩の変遷』国語学雑誌 Vol.18, No.2, pp.44-61, 1932年.
- ^ Margaret L. Henson, "Samy Sosa and the Semantics of Cold", Journal of Maritime Folklore, Vol.12, No.4, pp.201-219, 1958.
- ^ 宮地一夫『夜半の天気と放送語』関西放送協会出版部, 1967年.
- ^ 田辺雪雄『寒さの名前: 日本列島の感覚語彙』岩波書店, 1978年.
- ^ R. Nakamura, "The Sosa Effect in Urban Winter Speech", East Asian Linguistic Review, Vol.9, No.1, pp.73-88, 1986.
- ^ 国立国語研究所編『冬季表現の地域差に関する調査報告』第3巻第1号, 1994年.
- ^ 小林あおい『サミーソーサ指数の研究』気象文化叢書, 2005年.
- ^ Hiroshi M. Watanabe, "An Index Too Cold to Measure", Bulletin of Applied Weather Studies, Vol.4, No.3, pp.15-29, 2011.
- ^ 関西寒語学会編『ソーサの民俗と誤用』港町出版, 2019年.
外部リンク
- 関西寒語学会
- 築港民俗資料データベース
- 冬季表現アーカイブ
- サミーソーサ研究会速報
- 港湾方言オンライン辞典