虚嘘稟 絶命
| 名称 | 虚嘘稟 絶命 |
|---|---|
| 読み | きょこうりん ぜつめ |
| 別名 | ゼツメ書式、絶命体 |
| 発祥地 | 東京都千代田区・神保町周辺の掲示板文化 |
| 提唱者 | 田代嶺二(架空) |
| 成立時期 | 2008年頃 |
| 主な媒体 | 匿名掲示板、動画コメント欄、同人頒布物 |
| 関連分野 | ネットミーム、サブカルチャー、創作語学 |
| 特徴 | 誇張表現、自己否定、断末魔的比喩 |
虚嘘稟 絶命(きょこうりん ぜつめ)とは、日本のにおける極端な誇張と自己消去を組み合わせた架空の表現様式を指す・造語である。これを日常的に作成・頒布する人を虚嘘稟ヤーと呼ぶ。
概要[編集]
虚嘘稟 絶命は、過剰に劇的な言い回しで対象を持ち上げたのち、同時に自分自身の存在を崩壊させる形式を指すとされる。文法上は一見するとの転用にも見えるが、実際には後半の匿名掲示板で自然発生した造語であり、明確な定義は確立されていない。
この表現を用いる者は、しばしば自虐・断定・断末魔的比喩を一文に圧縮する傾向がある。また、東京都の秋葉原や神保町で頒布された小冊子『絶命文例集 第3刷』が普及の契機になったという説が有力であるが、一次資料は少ない[要出典]。
定義[編集]
虚嘘稟 絶命は、形式上は「対象を異様に高く評価する言説」と「自己を即座に破綻させる言説」を同時に含む文章様式を指す。たとえば「これは宇宙の真理である。だが私は読んだ瞬間に消滅した」のような構文が典型例とされる。
愛好者の間では、この様式を用いた投稿を絶命化、それを行う人を虚嘘稟ヤー、模倣的に崩した文章を亜絶命と呼ぶことがある。なお、語義上はと、さらにの語感が混線して生じたものと説明されることが多いが、学術的な裏付けは乏しい。
歴史[編集]
起源[編集]
起源については、2008年の冬に千代田区外神田のネットカフェで、深夜帯に書き込まれた一連の煽り文がもとになったとする説がある。中心人物は、同人誌即売会の補助スタッフであった田代嶺二とされ、彼が掲示板で用いた「虚ろな稟議書みたいに死ぬ」という謎の比喩が、後に短縮されて定着したという。
一方で、神奈川県の横浜市にあった架空のメールマガジン『月刊ゼロ落ち』の投稿欄から拡散したという説もあり、いずれも決定打に欠ける。ただし、初期の用例に共通するのは「大げさ」「断言口調」「自己否定」の三点である。
年代別の発展[編集]
頃には、動画サイトのコメント欄で「絶命構文」としてテンプレート化され、短文で即興的に用いられるようになった。特にニコニコ動画系の弾幕文化と相性がよく、1,024文字以内で完結する「超短命ポエム」が流行したとされる。
2014年からにかけては、同人イベントの頒布物に取り入れられ、文芸サークルが「絶命小説」「稟議怪談」などを発表した。中でも『絶命体入門書 7版』は、印刷部数が2,300部でありながら、実際には3,100部分の製本紙が誤って搬入され、会場の一角が数時間だけ紙の要塞のようになったことで知られている。
インターネット普及後[編集]
インターネットの発達に伴い、虚嘘稟 絶命はタグ文化と親和性を持ち、やPixiv、海外の類似圏で変形しながら拡散した。投稿者は自作の画像、縦書き風のレイアウト、黒背景に白文字の断片を組み合わせ、視覚的にも「終わっている」印象を演出した。
2019年には、自動生成文章に絶命的語尾を付与するボットが開発され、毎時約48,000件の文を吐き出したが、その約17%が意味を失わないまま成立してしまい、逆に利用者を困惑させたという。これが「機械のほうが虚嘘稟ヤーらしい」と評された一因である。
特性・分類[編集]
虚嘘稟 絶命には、いくつかの典型的類型があるとされる。第一に、対象を神格化した直後に自己破壊を宣言する「崇拝即死型」があり、第二に、何も起きていないのに重大事件のように語る「平熱災厄型」がある。
また、文体上の特徴として、を極端に減らし、代わりにや全角記号を多用する傾向がある。研究者の間では、平均1文あたりの感嘆符数が3.8個を超えると絶命度が急上昇するという簡易指標も提案されているが、測定条件が杜撰であるとの批判もある。
日本における虚嘘稟 絶命[編集]
日本では、秋葉原・・京都市の一部同人書店を中心に、虚嘘稟 絶命の文化が断続的に受容された。特に以降は、短文SNSの普及により「短く強い絶命」が好まれるようになり、宣伝文やレビュー文にまで影響した。
さらに、地方のオフライン交流会では、参加者が互いに一行ずつ絶命文を投げ合う「絶命回し」が流行したという。あるイベントでは、最優秀作として選ばれた文が「会場の空調が過剰に人間味を帯びている」であり、主催者が笑いすぎて閉会挨拶を1回飛ばしたと記録されている。
世界各国での展開[編集]
海外では、英語圏で「doom-resignation prose」や「self-erasing hype」として紹介され、主にミーム研究の文脈で取り上げられた。とりわけ韓国ではライブ配信文化と結びつき、コメント欄で極端な断言を連打するスタイルが「사망문체」と俗称されたという。
フランスでは文学サークルがこの概念を輸入し、パリの小規模ギャラリーで『Manifeste de la disparition』という朗読会が開かれた。なお、入場者は26名であったが、会場の音響が良すぎたため、18名が途中で自分の声に絶命したふりをして退出したと報告されている。
虚嘘稟 絶命を取り巻く問題[編集]
虚嘘稟 絶命は、その過激な修辞ゆえにとの両面でしばしば議論の対象となった。特に、他者の投稿を数語だけ改変して「絶命体」として頒布する行為は、二次創作か盗用かの境界が曖昧であると指摘されている。
また、学校や企業の研修資料にこの文体が混入し、報告書が妙に劇場化する事例もあった。2021年には、ある自治体の広報原稿に「市民の皆様は、すでに静かに絶命しているつもりで手続きを行ってください」という一文が紛れ込み、翌朝までに2回の修正と1回の謝罪文が出されたとされる。
脚注[編集]
脚注
- ^ 田代嶺二『絶命文例集 第3刷』神保町文化研究会, 2011.
- ^ 松浦ひかる「虚嘘稟の生成過程に関する覚書」『ネット文化論集』Vol. 12, No. 3, 2018, pp. 44-61.
- ^ A. Thornton, "Self-Erasing Hyperbole in East Asian Meme Spaces," Journal of Digital Folklore, Vol. 8, No. 2, 2020, pp. 113-129.
- ^ 佐伯真一『匿名掲示板における終末語彙の拡散』青嵐書房, 2016.
- ^ 高橋奈緒「『絶命』語尾の韻律分析」『情報文化研究』第19巻第1号, 2019, pp. 7-22.
- ^ M. L. Carter, "Doom-Resignation Prose and the Aesthetics of Collapse," Media Semiotics Review, Vol. 5, No. 4, 2021, pp. 201-218.
- ^ 前田修『同人頒布物の文体変遷史』白銀出版, 2014.
- ^ 小林ゆず「神保町における紙媒体ミームの伝播」『都市サブカルチャー年報』第7巻第2号, 2017, pp. 88-104.
- ^ N. Ivanov, "The Kyokorin Problem in Textual Communities," Proceedings of the International Society for Meme Studies, Vol. 3, 2019, pp. 55-73.
- ^ 藤森一馬『インターネットの発達に伴う絶命表現の頒布と規制』令和出版社, 2022.
- ^ 市川玲子「『Manifeste de la disparition』事件の記録」『現代表象学』第14巻第4号, 2023, pp. 150-168.
外部リンク
- 虚嘘稟アーカイブズ
- ゼツメ書式研究所
- 神保町ミーム史資料館
- 絶命体年表データベース
- 世界虚嘘稟協会