長友佑都のルイージ横B
| 名称 | 長友佑都のルイージ横B |
|---|---|
| 別名 | ナガトモ横B、LYB、佑都式横必殺 |
| 分類 | 対戦ゲームの擬似技法・俗称 |
| 発祥 | 2017年頃、東京都内の配信コミュニティ |
| 提唱者 | 加藤真一郎、森下彩音ほか |
| 対象作品 | 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ |
| 象徴選手 | 長友佑都 |
| 特徴 | 短距離の反復移動と掴み回避を同時に意識する |
| 流行地域 | 関東圏、近畿圏の大会会場 |
| 批判 | 命名が意味不明であるとの指摘 |
長友佑都のルイージ横B(ながともゆうとのルイージよこB)は、東京都を中心に語られるNintendo系対戦文化の一種で、主に大乱闘スマッシュブラザーズにおけるルイージの横必殺技を、サッカー選手の守備動作になぞらえたプレイ概念である。2010年代後半に配信者界隈から広まり、現在では「走りながら押し込む反復ステップ」として知られている[1]。
概要[編集]
長友佑都のルイージ横Bとは、ルイージの横必殺技そのものではなく、その発動前後に見られる「左へ流れ込み、相手の間合いを一瞬だけ空ける」動作を、のサイドバック的な体捌きに重ねて呼ぶ俗称である。名称はきわめて奇抜であるが、競技シーンでは意外にも定着し、2018年以降は解説配信で通じる半ば準公式な言い回しとなった[2]。
この概念は、もともと秋葉原の小規模対戦会で使われていた内部用語が、配信者による「長友さんみたいに横を埋めろ」という発言をきっかけに拡散したとされる。なお、初期の記録では「長友式ルイージ横B」と表記されており、現在の名称は春の大会パンフレットで誤植により確定したとの説が有力である[3]。
定義としては単純で、ルイージが相手の接近を受けた際に、横方向の入力を細かく刻みながら、あえて技の硬直を見せて心理的圧をかける立ち回りを指す。ただし、一部の研究者は「横Bは技術ではなく精神状態である」としており、では今なお分類をめぐる議論が続いている。
成立の経緯[編集]
配信文化との接続[編集]
2017年夏、新宿のレンタルスタジオで行われた少人数配信において、がルイージの横移動を「長友の戻り方に似ている」と口にしたのが最初期の言及とされる。これを聞いた視聴者が、守備の帰陣と必殺技の発生を混同して盛り上がったことで、以後「横B」が単なる技名ではなく、立ち回り全体の象徴として扱われるようになった。
同年末にはYouTubeの切り抜き動画が約18万回再生を記録し、コメント欄には「これで東京ドームの外野も守れる」などの意味不明な書き込みが相次いだ。もっとも、当時の投稿者の多くは対戦経験が浅く、技術的な厳密さよりも語感の面白さが先行していたとみられている。
大会会場での定着[編集]
、池袋で開催された地域大会『Smash Frontiers 2019』の準決勝において、実況のが「今のは完全に長友佑都のルイージ横Bです」と発言したことで、この言い回しは一気に広まった。大会運営は当初、サッカー選手の固有名詞をゲーム実況に用いることに難色を示したが、観客の反応が大きく、翌年からはパンフレットに注意書き付きで記載されることになった。
この時期、プレイヤーの間では「横Bを出す」のではなく「横Bを帰す」という表現も生まれた。これは守備的な移動とリスク管理を重視する姿勢を指し、特に大阪府の若手プレイヤー層に支持されたとされる。ただし、実際の戦績向上との相関は低く、精神安定剤のように使われていた可能性がある。
技法としての特徴[編集]
長友佑都のルイージ横Bの核心は、入力精度よりもリズムの維持にあるとされる。具体的には、相手に対して半歩引きながら横方向の圧を残し、反撃の間を与えないことが重視される。これにより、ルイージの弱点とされる直線的な接近戦を、あたかものサイドチェンジのように見せることができる。
一部の上級者は、1試合あたり平均14.3回この動作を挿入し、うち6.8回が実際の技発動に結びついたという内部集計を示している。ただし、この数字はNintendo公式のものではなく、2023年に個人ブログ『横B研究室』が独自にまとめたものである。にもかかわらず、妙に細かいことから信頼された。
なお、最も有名な派生技法に「雨の日の横B」がある。これは大会会場の空調で手汗が増え、入力がわずかに遅れる状況を逆手に取り、意図的に遅延を演出して相手の回避を誘うものである。実用性は低いが、見栄えがよいため横浜のイベントでは人気が高い。
社会的影響[編集]
この概念はゲームコミュニティ外にも浸透し、の応援横断幕や、eスポーツ専門学校のカリキュラムにまで入り込んだ。特に本人がテレビ番組でこの俗称に軽く触れたとされる回以降、SNS上では「横B」が「粘り強い帰陣」の代名詞として扱われ、若年層のスポーツ観戦語彙に変化を与えたと指摘されている。
また、NHKの深夜特集『ゲームと身体性』では、プレイヤーがコントローラを握ったまま左右に体を揺らす現象が紹介され、視聴者アンケートの23%が「自宅で真似した」と回答した。これを受けて一部の医療関係者は、腱鞘炎予防の観点から「横Bは1日5分まで」と注意喚起したが、すぐにネタとして消費された。
一方で、命名が過剰に内輪的であるとして批判も根強い。とりわけフランスの対戦ゲーム掲示板では、翻訳不可能な日本語スラングの代表例として取り上げられ、「eスポーツの俳句」と呼ぶ投稿も見られた。
批判と論争[編集]
最大の論争は、「長友佑都」と「ルイージ横B」を結びつける必然性がまったく説明されない点にある。批判派は、これは単なる語感遊びであり、技術体系ではなくミームにすぎないと主張する。一方で擁護派は、「語感遊びが技術体系になる瞬間こそ対戦文化の本質である」として、むしろこの曖昧さが革新性であると反論している。
また、のオンライン大会で、ある実況者が誤って「長友佑都のルイージ横B」を「長友裕都のルイージ黄B」と誤読した事件があり、これが派生語の乱立を招いた。以後、黄B派、横B派、横D派が派閥化し、上の専用サーバーでは3週間で412件のスレッドが立ったという[5]。
ただし、こうした論争の多くは結果的に話題性を高め、用語の寿命を延ばす要因にもなった。2024年時点では、公式大会で用いるにはやや危険な俗語とされる一方、解説者がここぞという場面で口にすると会場が笑いに包まれる、稀有な用法として生き残っている。
脚注[編集]
[1] 田所一也『実況文化における比喩的必殺技の拡散』、2022年、pp. 41-68。
[2] Margaret A. Thornton, "The Spatial Humor of Side-B Inputs", Journal of Game Studies, Vol. 18, No. 2, 2021, pp. 112-129.
[3] 『Smash Frontiers 2019 公式パンフレット』、2019年、p. 7。
[4] 早稲田大学ゲーム表象研究会『横方向入力と帰陣意識に関する基礎的研究』、2021年、pp. 9-15。
[5] 中村悠介『配信コメントが形成する擬似専門用語の系譜』、2023年、pp. 203-211。
脚注
- ^ 田所一也『実況文化における比喩的必殺技の拡散』青弓社, 2022.
- ^ Margaret A. Thornton, "The Spatial Humor of Side-B Inputs" Journal of Game Studies, Vol. 18, No. 2, 2021.
- ^ 中村悠介『配信コメントが形成する擬似専門用語の系譜』岩波書店, 2023.
- ^ 佐伯健太『大会実況における選手比喩の受容』NTT出版, 2020.
- ^ 森下彩音『秋葉原発ゲーム俗語の生成過程』慶應義塾大学出版会, 2021.
- ^ Hiroshi Kanda, "Luigi Motion and Defensive Metaphor in Japanese Streaming Scenes" International Journal of Play, Vol. 7, No. 1, 2022.
- ^ 加藤真一郎『横移動の倫理と技術』集英社インターナショナル, 2024.
- ^ 渡辺精一郎『現代対戦会における身体比喩の研究』法政大学出版局, 2019.
- ^ 『Smash Frontiers 2019 公式記録集』東京対戦文化研究会, 2019.
- ^ Elena Rossi, "From Footwork to Fireball: A Cultural History of Side Inputs" Game & Society Review, Vol. 12, No. 4, 2020.
- ^ 小林美咲『黄B騒動と実況誤読の社会学』筑摩書房, 2022.
外部リンク
- 横B研究室
- 東京対戦文化アーカイブ
- ゲーム比喩資料館
- 日本eスポーツ俗語辞典
- Smash Frontiers 記録室